現役時代に通算2041安打、413本塁打を記録した小久保監督。ホークスの4番打者として常勝時代を築き、何度もチームを頂点に導いた。2012年にユニホームを脱ぎ、2021年に1軍ヘッドコーチとして9年ぶりに古巣に復帰。2022年より2軍監督を2年間務め、今季から1軍の指揮を執った。チームは春先から首位を独走し、9月23日に4年ぶりのリーグ優勝を決めた。
「1年間やってみて、最初から最後まで言っていることが全く同じ。貫いている印象でした。これは、なかなかできないと思います。僕も(年始の)自主トレから始まって、春のキャンプにオープン戦、最後は9月、10月に(シーズンの)全てが終わりますけど、最初にやっていることが最後には違うんですよね。毎年、最初と最後は違うし、変化しているのが普通。監督は、僕が見る限りでは全く同じことを言っていたので。そこはとんでもないことだと思います。すごいです」
開幕戦から日本シリーズ第6戦まで、全152試合で4番を託された。6月は打率.182、0本塁打と極度の不振に陥りながら、打順が変わることはなかった。「怪我を抜いたら、今年は一番打てなかったんじゃないですかね。8月に打ち出しましたけど、そこまでは苦しすぎるくらい。最終的にホームラン王は取れましたけど、苦しみながら取れたということが、大きな自信になります」。球宴に出場した際には、小久保監督と食事に行く機会にも恵まれた。「『4番から逃さない』と言われたことは痺れましたね」。指揮官の姿勢、そして采配からも「変わらないこと」の凄みをひしひしと感じていた。
小久保監督は「貫いている」。山川の言葉に今宮も同調した。「その通りだと思います。やることを変えずに、徹底していた。僕らも曲げないようにとは思っていました」。
2022年に打率.296を記録した今宮。コンパクトなスイングを心がけ、キャリアハイの成績を残した。打撃における方向性はこの年から一貫しているといい、今季についても「スタイルを変えようと思ったことは、ほぼなかったです。打てない時もありましたけど、貫いた結果、70%、80%くらいの力は出せた。僕も変えなくてよかったし、変えずにやっていこうとは2年前から思っています」と語る。
出塁すること、走者を返して打点を稼ぐこと……。小久保監督は常に選手ごとに「役割」を明確にしてきた。今宮は今季133試合に出場し、打率.262、6本塁打、39打点を記録。2番打者としては、102試合に先発した。自分自身の仕事を全うしようとする日々で、「僕にとっては、山川の存在が大きかったです」。チームが勝つために何をするべきか、ハッキリと理解できたからだ。
「今年に関しては山川が加入してきたじゃないですか。近藤(健介外野手)やギーさん(柳田悠岐外野手)、クリ(栗原陵矢内野手)もいて、なんとかそこに繋ぐという思いだけでした。僕の役割をする上で、山川の存在はすごく大きかったです。しかも、1番は佑京(周東佑京内野手)でしたから。塁に出たら、ほぼ走るという選択になる。(自分の)前に佑京がいて、後ろには山川がいる。意識が固定されたところはありました」
3月29日、オリックスとの開幕戦(京セラドーム)。小久保監督は「替えの利かない人材になりなさい」という言葉で、チームにプロ意識を植え付けた。今宮の魅力は、球界屈指の守備力と、堅実な打撃。数字には表れないリーダーシップも、後輩やファンに愛される大きな理由だ。指揮官の言葉も「いろんな意味がある。そういう(チームを引っ張る)面も大事なこと」と受け取る。プロ野球選手としてどう勝負していくべきなのか、改めて明確になったシーズンでもあった。
「1人1人の役割は違う。山川なら長打が大事になる選手。4三振しても1本ホームランを打つとか、そこが求められると思いますけど、僕の場合はそうじゃない。(打席が)4回あれば2回、3回なら1回は塁に出る形のプレーヤー。その率を求められるので。替えの利きやすい選手かもしれませんけど、それが僕にできること。この先、現役をやっている間はそのスタイルでしかないと思いますね。あとはしっかり守ることです」
現在はつかの間のオフを過ごしているが、すでに2025年の戦いは始まっている。「引き続き、来年もやることは一緒です」と今宮は語る。絶対に揺らがない指揮官がいるから、選手は迷わずに進んでいける。