ソフトバンクの近藤健介外野手が29日、みずほPayPayドームで契約更改交渉に臨み、現状維持の5億5000万円(金額は推定)でサインした。「もう本当に頑張ってくれたと。優勝に貢献してくれたというのは言ってもらいました。個人的には最後に怪我があったので、来年はフルでということを(伝えました)」と内容を明かす。
2022年オフに海外FA権を行使して、日本ハムから移籍した。鷹2年目となった今季は129試合に出場して首位打者と最高出塁率のタイトルを獲得。打率.314、19本塁打、72打点でリーグ優勝に貢献した。初のMVPにも輝いたが「よかったと思いますけど。怪我があったので。143試合に出てタイトルを獲りたかったので、そこが一番悔しいです。日本シリーズも負けましたし、後味はよくないなと思いました」と、満足はしていない。
移籍1年目だった昨シーズンは本塁打、打点の2冠を獲得。現役選手の中で“最強打者”とも呼ばれ、常にハイレベルな活躍が求められる存在だ。獲得経験のない最多安打のタイトルへの意欲を問われると「獲れればなんでも嬉しいですけど、最初からあんまりそこは求めてないかなってのは思います。やっていくうちに狙えるのであれば、本数は意識はしてくるかなと思いますけど」と淡々と話す。足元を見つめ、常にチームの勝利を優先する男だが、どんな年でも奪いたい栄冠が1つだけある。
「こだわりは出塁率しかないので、なんとか毎年獲りたいなって思っているタイトルです。そこは変わらないかなとは思います」
日本ハム時代に2度、ホークスでは2年連続と、計4度の経験がある最高出塁率。「その年その年でバッティングは終わりだと僕は思っている。また2025年に向けて自分の形を見つけたい」と話す上で「そんな中でもやっぱり打率3割、出塁率4割ってところは必ずしないといけないなってのは自分の中で決めているんで。そこはブレずにいきたいです」と強調した。
チームメートの柳田悠岐外野手は安打数や本塁打、積み重なっていく数字を大切にしている。近藤も「増やしたい」と重視している部分だが、常に変動する「率」という難しい領域にこだわるのも、天才打者の矜持だ。「高いレベルで平均して数字を出したい。そういうことに関しては今年も正解だとは思ってないんで。長打率っていうところでも、もっと磨きをかけたい」と続ける。本塁打王についても「(こだわりは)ないですね。山川さんのバッティング練習や試合を見ると敵わないなと思うので、そこは山川さんに任せてっていう感じです」とキッパリ言った。
9月16日のオリックス戦(京セラドーム)で右足首を捻挫。10月4日のレギュラーシーズン最終戦まで出場できず、ポストシーズンで復帰したものの、万全な状態ではなかった。現状についても「慎重まではいかないですけど、気にしながらはやっている状態なんで。そこまで制限がかかってるとか、そういうのはないので。順調かなと思います。リハビリを重ねていて、本当に違和感がなくなるまでは」と話す。
来季に向けて、まずは体から万全にしなければならない。小久保裕紀監督が、右翼へのコンバートを明言したからだ。「個人的にはレフトの方がやりやすい。左バッターで頭を越してくるってあんまりいないので。思い切って守れるんですけど、やっぱり右バッターって小さくても頭を越してくる打球があるので。その辺の難しさは僕自身の中ではあります」。自分と入れ替わる形で左翼になる柳田のためにも、大きな負担は自分が背負う覚悟だ。
「ギーさんほど僕は難しくはないのかなと思いますけど。ギーさんをDHだったり、コンバートして、ある程度負担がないっていうところで、ということなので。僕がDHで出ていたら意味ないと思う。まずは怪我せずに、ちゃんとライトを守れる体ってのは大事になってくるかと思います」
活躍すればするほど、求められるハードルは高くなる。「ツーベースとかも含めて、やっぱり長打率です。その結果がホームランだったらいいかなぐらいなんで。5割以上は絶対打ちたいですし、そこは変わらずの目標ではあります」。何度も“率”という言葉を繰り返した。進化を止めない天才打者は2025年、どんな世界を見せてくれるのか。