愛用するグラブは久保田スラッガー社…担当の梅田歩夢さんが明かす舞台裏
「三井ゴールデン・グラブ賞」の表彰式が28日、都内で行われた。外野手部門で初受賞し、スーツ姿で参加したのがソフトバンク・周東佑京内野手だ。両リーグの受賞者が発表された12日には「ずっとほしかった賞なので、とても嬉しく思います。1年間試合に出場した証でもありますし、頑張ってきて良かった、と痛感しています。偉大な先輩たちがたくさんいらっしゃいますが、早く今宮さん(健太、受賞5回)に追いつけるよう、これからも頑張ります」とコメントしていた。
周東が愛用するグラブは、久保田スラッガー社。2022年からホークスの担当者となったのが、梅田歩夢さんだ。2週間に1度、大切なグラブをメンテナンスするなど、二人三脚で守備を支えてきた。念願だったゴールデン・グラブ賞に「めちゃくちゃ嬉しいです。僕も担当選手が獲得したのは初めてだったので」と声を弾ませる。
「獲ったぞ!」。梅田さんが受賞を知ったのは、同僚からの電話だった。正式に発表された12日。X(旧ツイッター)のタイムラインを眺めていた。午後5時に発表されたのを確認して、すぐ周東にLINEを送ったという。その“返事”から、喜びが溢れ出ていたというのだ。
「お疲れ様です! ゴールデングラブ賞おめでとうございます。一番獲って欲しいタイトルだったので、嬉しいです!」
「いやーよかったよかった!」
安堵したような周東の返答に、梅田さんは「いつもの感じやと『ういっす!』とか『ありがとう』とか、そういうところで終わると思ったんです」と、驚いた。日頃から、グラブに関して頻繁に連絡を取る2人。「いやーよかったよかった!」という言葉には「本人も嬉しそうやなって思いました。一言であることには変わりないんですけど、その中でも予想と違ったものですから。だって普段なら『了解!』とかですもん(笑)」。画面の向こう側にある気持ちが、しっかりと伝わってきた。
記者投票で選出される守備の“栄冠”。これまでは二塁や三塁も守ってきたが、今季守ったのは中堅だけだった。そんな周東が、ゴールデン・グラブ賞に対して、明確な意思を示したことがある。「今年、獲りたいな」――。みずほPayPayドームのロッカー、ポツリと漏らした一言を、梅田さんも聞き逃さなかった。シーズン後半の出来事で「途中から、明らかに意識するようになっていましたね」と代弁する。
「本人の中でも、自信があったんだと思います。『今年はいけるんじゃないか』って。『獲りたい』って発言は少しビックリしましたけど、(普段のやり取りの中で)感じることがありましたし。佑京さんの足の速さならではのプレーがたくさんあったので、僕の中でも『頼むから怪我だけはしないでくれ』って思っていました」
2024年のグラブを作るにあたって、梅田さんに1つだけ要望があった。「去年のやつよりも、もっと軽く小さくしてくれ」。他の選手に比べてただでさえ小さいサイズだった。その上で「プロの選手は体が大きいので、やっぱり一般の人よりも大きいものを使うんです。その中でも佑京さんは、もっと走りやすくしたかったんだと思います。『外野用に大きさは必要ない』って言っていました」と舞台裏を明かした。
小久保裕紀監督の「日本で佑京にしか捕れない」というコメントを何度も聞いた。日頃からコミュニケーションを取る中で、周東の守備に対する自信が深まっていく姿を、梅田さんも隣で見守ってきた。「発言でも伝わってきましたし、内野をやっていた時は守備練習の前ってすごく嫌そうな顔をしていたというか(笑)。外野をやるようになってから気が楽になった感じはします。やっぱり足の速さを生かせるから、ですかね」。多くの人に支えられて獲得した、念願のゴールデン・グラブ賞だった。
(竹村岳 / Gaku Takemura)