鷹フルの取材に応じたオスナ…打ち明けたのは田原大樹通訳への感謝
ホークスに移籍して、2年目のシーズンが終わった。今季は4年契約を結んだ1年目。ロベルト・オスナ投手は「良くない1年でした。自分としては今年の結果には何も満足していない。本当に悔しいシーズンでした」と、2024年の戦いを振り返る。今月22日、帰国のために福岡を離れた右腕は鷹フルの取材に応じ、全てを終えた今季を総括した。そこで明かしたのは、シーズン中に治療のために緊急渡米し「最悪の2週間」と語った日々を過ごす中。“相棒”に激怒した日のことだった……。
39試合に登板して0勝3敗、24セーブ、防御率3.76。腰部に痛みを感じながらマウンドに立ち続け、8月2日には治療のために渡米することを選択した。9月5日に再来日し「戻ってきてからは痛みはない。この状態でまたオフになるので、しっかりと準備できると思います。来年に向けて、オフシーズン頑張って準備をします」と言い聞かせる。葛藤を抱きながらも、ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手らとともに必勝パターンを担った。リーグ優勝に大きく貢献したのは間違いないだろう。
そんな右腕を支えたのは、今季からホークスに入団した田原大樹通訳だった。2009年からロッテの通訳として、プロ野球のキャリアをスタートさせた。オスナと初めて出会ったのは、2022年6月。ロッテでチームメートとなったことから、交流は始まった。
オスナは2023年からホークスに加入。その1年後、田原通訳も“移籍”した。そこには、オスナの意向が大きく反映されていた。
「実際に(自分も)『ぜひ来てもらいたい』という話をしていました。私の家族のことも、千葉からのことも知っているし、あとは逆に(田原通訳の)家族のことも知っている。これが必要で、これが必要じゃない、といったところもわかってくれているから、自分としては来てほしかった。周りのことまで見てもらえて、とても満足しています。チームにもとても感謝しています、自分が望む通訳を連れてきてくれたので」
身の回りの世話も、通訳の仕事の1つ。時間ができれば家族と一緒にバーベキューをするなど、オスナから感謝の思いを表現することも多かった。田原通訳の愛息を見つければ、右腕はいつも目線を下げて「元気か?」と挨拶していた。ともに戦った1年を終えて「千葉から家族と一緒に来てくれて、自分のために働いてくれた。すごく感謝しています」と、改めて言葉にした。
「今までいろんな通訳と接してきましたけど、みんな素晴らしいです。誰がすごい、とかないですけど。ただ、彼(田原通訳)に関しては子どももいますし、何かがあった時にこれをしないといけない、どこに連れていかないといけない、これが必要だとかを感じて動いてくれた。僕の妻もすごく気に入ってくれた。そういったファミリーのことに関して、すごくよかったんだと思います」
今季の印象的な試合を問われても「1つもない。常にフラストレーションが溜まっていた。いいピッチングもできないし、自分も怪我をしてなかなか上手くいかなかった。だから、チームに貢献できなかったことはすごく残念です」と即答する。守護神にとって、最も苦しかったのが7月だ。腰部の状態が悪くなった一方で、治療は思ったようなペースで進められなかった。眠ることすらできず「最悪の2週間だった」と表現する。治療のために渡米を選択せざるを得ないほど、ストレスは少しずつ大きくなっていた。
しかし、オスナがスタッフ陣とコミュニケーションを取るには、田原通訳の存在が必要不可欠。7月のある日、電話でのやり取りの中で激怒されたことがあった。当然、田原通訳が悪いのではなく、右腕のストレスが“爆発”してしまっただけ。今だからこそ、深々と頭を下げることができた。
「あの時は、2人の問題ではなかった。僕も、彼も悪かったわけではないから。誰かとコミュニケーションを取るには、彼を通さないといけない。すごくフラストレーションが溜まっていたし、どうしようもない状態でした。すごく申し訳なかったですし、お互いにどうしようもなかった。僕には僕の事情があって、その間に彼が入ってくれていることもわかっていたから、その後に問題はなかったです」
6月23日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。右腕は2点リードの9回から登板した。ソトに逆転3ランを浴びるなど3失点。チームは引き分けに持ち込んだものの、延長10回からゲームセットまで、オスナの姿はベンチになかった。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「トレーニングをしていた」と説明したが、自身が逆転弾を許した展開だっただけに、田原通訳も「あの行動は良くない」と、その姿勢は寂しく思えた。お互いのことを思い、常に本音でぶつかる“相棒”だった。
最後に、ファンに対してメッセージをもらった。どれだけ苦しくても前を向き、全力で応えようとしてきたオスナ。この時だけは、“謝罪”の言葉が口をついた。
「まず最初に申し訳なかった。なかなか満足がいくシーズンではなかった。チームもそうですけど、ファンもスタッフも、みんなが望むような結果にできなかったのは申し訳ないです。自分なりに練習して準備をしたんですけど、なかなか満足のいくシーズンじゃなかった。来年またチャンスをもらっているので、オフシーズンにしっかりと準備して、皆さんの期待に応えられるように。ただ本当に、今年は皆さんに申し訳なかったという気持ちが強いです。自分としても試行錯誤をしたんですけど、なかなか上手くいかなかったです」
ホークスに移籍して2年目が終わった。入団会見では「チャンピオンになるために来た」と言った。日本一を掴むために。周囲の支えに感謝して、来季こそは必ず輝く。
(竹村岳 / Gaku Takemura)