山川穂高の独特思考…若鷹に練習「するな」 圧倒的な自負、“プロ”として当然の核心

ソフトバンク・山川穂高【写真:栗木一考】
ソフトバンク・山川穂高【写真:栗木一考】

山川穂高「僕が一番性格が悪いはずなんです」

「山川(穂高)さんとも話すんですけど、今の若い選手は練習しなさすぎるんです」。こう語ったのは、牧原大成内野手だった。2010年の育成ドラフト5位で入団した男は“努力”で一気に階段を上り、侍ジャパンの一員として世界一も経験した。ホークスの未来を考え、過去には何度も「このままだと終わってしまうよ」と、後輩選手に伝え続けてきた。

 今季からホークスに加わった山川穂高内野手は、2月の春季キャンプ中も休日返上で打撃練習を繰り返すなど、自分の地位を築き上げても妥協を許さない姿勢があった。直近で言えば、三井ゴールデン・グラブ賞を一塁手として初受賞。「自分には一番無縁だと思っていたので、素直に嬉しいです。とにかく下手だった自分に対して、(西武の)黒田哲史(2軍野手)コーチが2年間、1日も欠かさず特守をしてくださったおかげですし、一番感謝しています」と感謝のコメントを出した。

“練習の虫”である通算252発のスラッガーに、今の若鷹はどう見えているのか。苦言を口にし続ける牧原大に対し、山川は「優しいです」と表現する。

「練習を『しなさすぎ』って話を確かにしたんですけど、マッキー(牧原大)と僕は違うんです。僕は『しなくていい』と思っているんですよ。だって、しないでいいじゃないですか。しなかったら僕が絶対に勝ちますもん。なんでみんな、すごく練習させようとする流れにするのか。いまいちわからないです」

 山川らしい言葉だった。その理由を続ける。

「だって、(若手が)練習しないと思っているんですよ? レギュラーとか試合に出ている人の方がするわけじゃないですか。オフもほぼ無休で。練習をしているかしていないかは別として、マッキーは意外と優しいんですよ。あいつは優しいからそういうふうに言うし、怒るんですよ。『今の若手が練習しない』とか、『もっとハングリー精神を持ってやった方がいい』、とか。あいつは伝えようとしているじゃないですか。僕は『するな』って思っていますからね。そういう意味では、僕が一番性格が悪いはずなんです」

 確固たる存在として君臨するレギュラーに勝つためには、努力するしかない。その全てを結果に繋げることができなければ、生き残っていけない世界だ。「だって(周囲が練習を)やらなかったらポジションも奪われないですし、やらないやつはクビになって終わるだけですからね」。山川自身も、競争に勝ってきた自負がある。オフシーズンである今、「もう争いは始まっていますからね。負ける気はないし」とキッパリ言い切った。

 ホークスに移籍して1年目の今季。自主トレをともにしてきたリチャード内野手と初めてチームメートになった。「人と争うことが好きじゃないんでしょうね」。2軍で5年連続本塁打王になった“未完の大器”がくすぶる理由の1つに、「いいやつ」であることを挙げていた。「自主トレを一緒にやっていて、活躍してほしい“贔屓”ではありますよ? でも活躍できないのはあいつのせいであって、周りがどうこういうのは全く関係ない」。プロ野球選手は個人事業主。チームスポーツであるものの、1人で戦い、勝っていかなければならない。

「めっちゃ練習して、来年のキャンプで誰がどう見ても『あ、こいつちょっと今までと全然違うぞ』ってなれば、『こいつとんでもないくらい練習をしてきたんだな』ってなるじゃないですか。ほとんど練習していない人がそんな動きはできないので。我々はプロだから、見たらすぐにわかるんです。それを見た時に初めて『うわ、ちょっとこれは俺もやらないといけないな』って始まるだけです」

 どれだけ時代が変わっても、結果を出すための準備と努力が必要であることは変わらない。「辻(発彦)さんとか『今の選手はよく練習する』って言っていました。どっちでもいいんです。練習しなくても活躍すればいいんです。1回も練習しなくて、活躍できるなら、それが一番いいわけですよ。そんなことはないと、僕は思っていますけどね」。山川らしい表現には、圧倒的な練習を繰り返してきた自信だけがみなぎっていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)