和田毅から今宮健太へ…「継承」すべきもの 引退で後輩が感じ取る時代の“変化”

ソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】

引退の報告は「結構軽いノリ」…遊撃の位置から見るエースの背中

 2024年の戦いが終わって、2週間が経った。「ゆっくりしています。色々と決めることは決めているので、それまではゆっくりして、やる時からしっかりやろうかなと思っています」と語るのは、今宮健太内野手だ。みずほPayPayドームを訪れ、鷹フルの取材に応じた。現役引退を決めた和田毅投手への思いを語った。後輩たちに「継承していかないといけない」という大先輩の姿に迫った。

 日本シリーズはDeNAに2勝4敗で敗退した。チームは4日に帰福し、夜には祝勝会が行われた。1軍で戦った主な選手が集まった中で、和田は自分自身の進退について報告していったという。今宮は、どんな状況で言葉を受け取ったのか。

「たまたま3人くらいの卓だったんです、僕らのところが。『辞めるから』って。結構軽いノリでしたよ。嘘でしょ? って。僕らはまず報道を見るじゃないですか。和田さん来年もやるんだって思っていましたから。僕らも正直、びっくりしましたし最初は冗談かとも思いましたけど。まさかでしたね」

 今宮がプロ入りしたのは2010年。和田は17勝を挙げ、パ・リーグMVPにも輝いた。海外FAを行使してメジャー挑戦、日本球界復帰、40歳を超えてもマウンドに立つ姿を、遊撃の位置から見守ってきた。「僕が入団して、試合に出る、出ないという時からずっと和田さんを見てきましたし。その時の姿と、40歳を超えた今も後ろ姿が変わらないというか。改めて、すごいなと思います。正直、まだまだやれただろうなとは思います」とリスペクトは尽きない。

 左腕は自分自身の矜持を「たとえどれだけ打たれたとしても、相手に向かっていく姿勢だけはなくしてはいけないと思ってやってきました」と表現していた。マウンドに立つ自分の姿を野手、ベンチ、スタンドのファンが見つめている。「何かを背負って投げること」を大切にしてきたから、和田はエースと呼ばれた。何試合と後ろを守ってきた今宮も、絶大な信頼を寄せていた。

「和田さんがおっしゃる通りです。調子がいい日も悪い日も必ずあるんですけど、悪くなった時も姿というのは変わらなかったですし。声をかけるというか、そんな必要もないと思うことは何回もありました。強いホークスを支えてきてもらった投手陣の中で、色んな意味で大黒柱だったなと。(引退され、これからは)より投手と一緒に束になって戦っていくことが大事かなと思います」

 偉大なスターがいなくなるということは、時代の変化そのもの。和田が引退する意味を、今宮も重く受け止めていた。

「後輩たちがどう真似していくのか。そこに近づいていくのかというところで、チームは強くなっていくんだと思いますし。強さが継続できる。僕らの場合は松田(宣浩)さん。そういう存在がいなくなって、チームとしてもなんだか違う感じになってしまったというのは、正直感じた部分があった中で、今年はスタートしました。結果的に日本一にはなれなかったですけど、リーグは制した。みんなが(やるべきことを)できたから、というのはあるかもしれないです」

 松田宣浩さんや、オリックスの川島慶三打撃コーチら、声でベンチを明るくしてくれた先輩がいた。背中を見てきたのは偉大な先輩ばかり。その時代を知るからこそ今宮は「今はベンチが、どうしてもシュンとしている」と表現したこともあった。来年7月には34歳になる。「いつクビを切られるのか、いつ野球ができなくなるのかわからないこの世界。いいものは継承していかないといけないし、悪いものを真似する必要はない。それは自分でも線引きすればいいと思う」。和田から学んだことは、それだけ多く、尊かった。

「まあ、9割……、いや、和田さんは全部がいいところでしたけどね。これ(引退)ばかりは和田さんが決めたことですし、あとはしっかりと僕たちが引き継いでいけたらなと思います」

 7度目の出場となった日本シリーズは、2勝4敗でDeNAに敗れた。今宮は敢闘賞を受賞したが「もう終わった話ですからね。来年に向けてというところでみんな動いているので。過去のことをどうこうはないですけど。来年に向けてまた一からのスタートだと思っています」と、2025年に視線を向けている。今度こそ、日本一になるために。和田が残したものは、後輩が受け継いでいかなければならない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)