周東佑京から「お前、遅えよ!」 川村友斗の走塁…追いかけられて「やばいやばい」

ソフトバンク・川村友斗(手前)と周東佑京【写真提供:産経新聞社】
ソフトバンク・川村友斗(手前)と周東佑京【写真提供:産経新聞社】

26日の日本シリーズ第1戦…横浜スタジアムの応援は「マジでデカかったです」

 球界屈指のスピードスターが、後ろから猛然と迫ってきた。「やばいやばいやばい」。感じていた率直な思いを明かした。

 頂点を決める「SMBC日本シリーズ2024」が26日、横浜スタジアムで始まった。重要な1戦目。ソフトバンクは5-3でDeNAに勝利した。注目を集めたのが、2人の走者による“追いかけっこ”だ。9回に代走から途中出場したのは、川村友斗外野手。福岡への移動日となった28日に電話取材に応じ、周東佑京内野手とのやり取りを明かした。

 川村にとっては初めての日本シリーズ。2点リードのまま、試合は9回に突入した。嶺井博希捕手に代わって、代走として一塁走者となった。周東の中前打でチャンスは広がり、今宮健太内野手を迎えた。打球は前進守備の右翼を越えていく。グラウンドに弾むことを確信してから川村はスタートを切ったが、それよりも早く周東は加速していた。2人の走者が続けるようにしてホームに生還。真後ろにいた先輩に対して、驚きの表情を見せていた。

 一連のプレーで、川村は二塁走者だった。どんな景色が見えていたのか。

「僕の角度からは、もしかしたらライトが捕球できそうなんじゃないかって感じでした。なかなかスタートも切りづらかったんです……。次の日にはコーチから、『もうちょっとハーフウェー取れていれば。(周東の角度からは)見やすかったと思うから』という話はされました。『あれでどっちとも帰れないのが最悪』と言われました」

 一塁走者だった周東からは右翼手と打球の距離が見えていたが、川村にとっては少し見えづらかった。スタートを切ろうか――。瞬時に判断しようとしていたが、目に飛び込んできたのは、自分よりも先にトップスピードに乗り始めていた周東だった。「打球を見ていたら、視界の端っこから佑京さんがブワァって。もう来ていたので『やばいやばいやばい』って思って走りました」。追いかけられるような形となり「僕自身も、今まで生きてきて1番速かったと思います。追いつかれたらやばかったので」と必死だった。

「お前、遅えよ!」。ホームインした後、笑いながらそう言われた。「すみません!」。後輩らしく、力強く返事をした。川村の走力については小久保裕紀監督も評価するほどだが「人生で初めての追われている感を味わいました。これで僕だけ生還して、佑京さんができなかったらやばいと思ったので、無我夢中で走りました」。ホークスが誇るスピードスターに、瞬く間に距離を縮められた。日本シリーズ初出場で、ファンの記憶にも刻まれるシーンとなった。

 代走で生還し、9回は右翼の守備に就いた。敵地・横浜スタジアム。相手の応援を、川村は背中から感じていた。

「マジでデカかったですし、圧倒されました。最初はベンチだったんですけど、(右翼席は)正面に見える感じじゃないですか。それも『うわ、すげえ』って思っていました。応援歌もカッコよかったですし、1戦目の最終回も“ドーン”って感じの雰囲気でした」

 結果的に、ロベルト・オスナ投手が3点を失う。最後は2死一、三塁で牧を迎え、一発が出ればサヨナラという状況にも追い込まれた。当然、球場を異様な雰囲気が包み込む。「あの時の空気はめちゃくちゃ緊張しましたし、すごかったですね。この2日間の横浜の応援は、本当に圧倒されました。交流戦の時もデカいって思ったんですけど、それよりも“ドーン”って感じでした」。何度も擬音で表現するくらい、印象に残った。

 日本シリーズが開幕する“前夜”。25日の夜は「ずっとホテルにいるかと思っていたんですけど、テツさん(西田哲朗広報)に『ご飯きてくれへん?』って言われて、行ってきました。大津(亮介投手)さんと、テツさんの知り合いもいました」。ビールを飲みながら、焼き鳥を味わった。日本シリーズという貴重な経験。身に起こる全てを楽しんで、必ず日本一になる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)