ソフトバンクの大野稼頭央投手は、2年目のシーズンを終えた。左投げ左打ちで、鹿児島県奄美大島の出身。大島高では、3年春に甲子園に出場した。2022年ドラフト4位でホークスに入団。ルーキーイヤーの昨シーズンは、主に3軍&4軍で経験を積んでいた。
今年は2軍戦も初めて経験した。ウエスタン・リーグで5試合に登板して2勝0敗、防御率1.93の成績を残し「去年もいろんなことを学ばせてもらって、特に試合をしていく中で学ぶことが多かった。今年は自分の体の部分だと、いろんな経験ができた年だなと。去年以上に学ぶことも得ることも多くて、濃い1年だったと思います」と振り返る。苦しんだ春先だったが、コーチの存在で迷うことなくレベルアップに集中できた。
2月の春季キャンプ中、異変が起きた。体に痛みはないのに、出力が上がってこない。「ちょっとダメだな」。そう声をかけたのが、奥村政稔4軍ファーム投手コーチ補佐だった。通常のメニューから、体作りがメーンとなった。試合に対して調整できない焦りを、当時は感じていた。シーズンが終わった今振り返ると、この期間が大きかったと大野は語る。
「自分のコンディションの調整だとか、トレーニングの方法について、今年はすごく勉強になりました。1回強化期間を与えてもらったことで、自分で学ぶことも多くなったし、追い求めることも多かったので。その期間で得るものは多かったです」
着目したのはウエートトレーニングと食事。公称では176センチとプロ野球選手としては決して大柄ではない。高い身体能力が持ち味だけに、筋量を上げる中でも、常に自分を見失うことはなかった。「ウエートでも、自分の体の武器を落とさずに、筋量を上げていくことをテーマにしていました。自分の武器は体のしなりだったり、バネ。そういうところを失わないように意識して、強くできるように」。1年間で体重は5キロ増え、72キロとなった。着実にプロの体に進化できたシーズンだった。
ファームの非公式戦では15試合に登板して4勝3敗、防御率3.88を残した。積極的にコミュニケーションを取ってくれたのが奥村コーチだ。「やっぱり、奥村さんと一番一緒に練習して、教わることも多かったです。そこが一番自分の身になっています。フォームやメカニックだったり、ゲームの中での流れ、状況に応じたピッチングもそうですし。いろんな技術面を会話の中で教えてくれました」。今年が指導者1年目、32歳の新米コーチから、愛情と情熱はしっかりと受け取っていた。
「奥村さんは緩いかと言えば緩くないですし、厳しいところもありますね。自分が聞いたことに対して、ちゃんとほしかった答えというか、納得できる答えが返ってくるので、すごくやりやすい。自分の中に落としやすい感じがありますし、めっちゃ視野が広いです。そこは本当にありがたいです」
2023年は奥村コーチも現役で、大野は1年目だった。3軍で顔を合わせることも多く「その時は見た目も怖くてあまり話していなかったんです。現役時代はだいぶ怖かったですので」と笑って振り返る。指導者となった今は、選手に対してしっかりと目を光らせていると、大野も感じているそうだ。「コーチになってから話すようになりました。現役の時は話すことは少なかったんですけど、意外と見てくれているじゃないですけど、覚えていてくれていることが多いなと感じました」。距離は自然と縮まった。少しでも成長していくために、コーチ陣の力も借りていきたい。
春先のコンディション不良を、自分の中でもプラスに変えることができた。しかし「来年からはそれが許されない」と自身が一番理解している。「11月、12月、1月でしっかりと鍛えて、体を作り直して、2月でヨーイドンができるようにやっていきたいです」。3年目となる2025年、まずは1軍登板を果たして、恩返しする。