1軍に負けじと、ウエスタン・リーグの優勝を手にしたホークスの2軍。1年間、指揮を執ってきた松山秀明2軍監督がシーズンを振り返った。「スポーツマンとして、チームとして守ってほしい」――。全2軍選手を集めて、1度だけ“叱った”ことがあった。それは指揮官が常々大事にしてきた「プロとしての思い」に反した行動を選手がとったからだった。そのシーンを思い出したのか、少し強めの語気で口を開いた。
「1回だけ、ちょっと叱ったことがあって。投げ終わったピッチャーがベンチで応援していないことがあったので。それは頭に来ましたね。裏でアイシングをしていて試合を見ていないとかね。これはスポーツマンとして一番良くないというか。自分が打たれた後、誰かに投げてもらっているのに、それを知らない顔して後ろにいる。野手に関してもそうですけど、そういうのは本当に良くないと思って。全員を集めて怒ったことがありますね」
今季、1軍の試合でも途中降板した投手がベンチの最前列で声を出し、ゲームセットまで味方を応援するシーンが幾度も見られた。大関友久投手や杉山一樹投手らの姿からは、勝敗に関係なく、自分が登板した試合には最後まで責任があると感じるほどだった。当然と言えば当然の行動なのかもしれないが、その姿をチームメートや首脳陣はしっかりと見ている。そうやって“勝たせてあげたい”と思える投手になっていく。
「そこはチームなので。個人プレーの要素もありますけど、最後はチームとしてやっている。(成績が)いい時は(振る舞いも)いいんですよね、みんなやっぱり。でも自分が悪かった時に、周囲にどういう対応をするのかってすごく大事だと思うんですよね。いい時は誰でもニコニコしながら、『オッケーオッケー』と言って終わるんですけど、ダメな時ほどそういうところはしっかりしてほしい」
結果が大事なことはもちろんだが、チームメートが一生懸命プレーしている時に、味方を“応援できない”ことが、指揮官としても悔しかった。プロとして自分自身の結果にこだわるのは当たり前のことかもしれない。だが、野球は1人でやるものではない。指揮官はそこに気づいてほしかった。野球の結果以上に大切にしてほしい人間性の部分だ。
5日に行われたファーム日本選手権では、DeNAに2-6で敗れた。この試合に先発した前田純投手は5回2失点。2番手で登板した三浦瑞樹投手は、1死も奪えずに3失点した。いい内容だったとは言えないが、松山2軍監督は自信をもって2人の“エース”をマウンドに送り出した。
「今年は前田純と三浦がともに先発としてチームを引っ張ってきた。ファーム選手権は1試合しかないので、どちらかが投げて、どちらかが投げないというのは嫌だったので。それならもう2人とも投げさせようと。結果がどうなろうが、2人で勝ってきて、ここ(ウエスタン・リーグ首位)にいるわけなので、彼らに託すだけですよね、最後は」
前田純と三浦は7月24日に支配下選手登録を勝ち取った。前田純はリーグ最多の10勝を記録し、三浦は防御率トップの1.60という成績を残した。「もう最後は頑張った順に出していこうよ、みたいな感じになってしまうので」。期待に応え成長してきたからこそ、少しでも大きな舞台を経験してほしかった。松山2軍監督の人情味が出た采配だった。
技術的にも、人間的にも若鷹たちは一回り大きくなった。指揮官が伝えてきたものは、間違いなく次のホークスを担う若手たちに伝わっている。選手たちの表情がそれを物語っていた。