倉野コーチが断言…1軍優勝は「ファームの勝利」 裏側にあった首脳陣の“連係プレー”

ソフトバンク・倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:竹村岳】

倉野コーチが表した感謝…「どれだけ1軍の戦力を上げられるか」

 リーグ優勝の裏には、1軍と2軍が一体となった綿密な“やりとり”があった。4年ぶりの日本シリーズ進出を決めたホークス。選手の活躍が原動力となったのはもちろんだが、首脳陣同士の頻繁なやりとりも優勝の大きな要因となっていた。

 安定した成績を残した投手陣を束ねてきた倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は、「ファームなしでは成し得なかった優勝だと断言できますよね」と話す。常に行っていたという松山秀明2軍監督との連絡。そこではどのようなやりとりがあったのだろうか。“ファームのおかげ”と語った意味を倉野コーチが、感謝の気持ちを込めながら明かした。

「やり取りは頻繁にしますけど、どちらかといえばピッチャーの場合は報告事項の方が多いかな。ある程度決まったことを報告するという。もちろん『松山さんの目で見て、どちらの投手の方がいいですか?』といった感じで相談させてもらった時はありますけど。野手と違うのは、ほとんど報告する形になっていた点ですね」

 1軍首脳陣も2軍の試合は常々チェックしている。投手であれば、どのような投球内容だったかなど、試合の映像だけではわからないものを報告するといった形だ。倉野コーチは2軍首脳陣と頻繁に連絡を取り、常にファームにいる選手たちの状態を確認してきたという。

「(小久保裕紀)監督がどういうことを望んでいるのかは、もちろんあります。僕が先回りして作っておいてからこういう風になりましたけどっていう時もあるし、両方ですかね」。選手を1軍に上げるのは、最終的には小久保裕紀監督の判断にはなる。それでも1軍投手陣の状態を見ながら、必要とされるであろう戦力は事前に確認してきた。小久保監督の要求を待つだけではなく、先にアクションを起こしてきた。

「ちょっと優先的に投げさせておいてほしいとか、回跨ぎをさせてほしいとか。左バッターの時に当ててほしいとかっていうリクエストは、常々(松山)監督にはします」

 選手にとって、準備が実るか実らないかは、その時々によって違いはあるだろう。しかし、首脳陣がそのような準備をしてきたからこそ、いざ1軍に昇格する時には役割が明確になる。ポジションに合った準備や、心構えを行いやすくできる。

「ファームがどれだけ1軍の戦力を上げられるかって僕はすごく重要だと思っているので。ファームなしでは成し得なかった優勝だと断言できますよね。僕もファームの経験がもちろんあるし、1軍の選手だけで勝ち取ったわけではないから。当然誰かに何かがあった時にはファームから(代わりの投手が)来るわけですから。その準備というか、それをどうさせるのかってすごく重要で。そういう意味では、ファームの監督をはじめ、コーチ、スタッフのみんなにはすごく感謝してます」

 首脳陣同士のやりとりは、倉野コーチだけが担っているわけではない。「奈良原(浩)ヘッドコーチも、多分小久保監督から何かを発信される前に、『監督こんな感じです』っていうようなことで、準備はしていましたね。それは奈良原ヘッドがそういう感じの人間なので、言われる前にある程度先に準備させるという。『監督から言われたわけじゃないですけど、松山さんこうなりそうなので、これはどうですか?』みたいな相談はたくさんありましたね」と、松山監督は明かす。

「結構、連絡が入ってくるんですよ。まぁ(奈良原ヘッドは)後輩なので、多分彼も話しやすいだろうし。大学の時も1個(学年が)下で、一緒にずっとプレーもしてきて、気心も知れているので。向こうが遠慮することも、気を遣うこともあまりないというか。お互いにそういうところはあったとは思いますけどね」。松山2軍監督にとって、大学時代からの後輩にあたる奈良原ヘッドも、毎日に近いくらいの頻度で連絡してきていたという。

 今季は1軍に初出場して、すぐに結果を出した若鷹も多くいる。笹川吉康外野手や、石塚綜一郎捕手は初本塁打も放った。尾形崇斗投手は開幕をリハビリ組で迎えたが、終盤戦には勝ちパターンでも登板するようになった。選手の実力はもちろんだが、常に必要な戦力を整えてきた1軍首脳陣と、2軍首脳陣との綿密なやりとりがそこにはあった。

 倉野コーチは噛み締めるように、感謝の気持ちを語った。「だって僕は彼らの練習を見ていないわけですから。もうファームの勝利とも言えますよ。本当に僕はそう思います」。

(飯田航平 / Kohei Iida)