周東佑京が語る「盗塁は必要ない」 進化する野球…3戦6発、CSで的中した“予言”とは

ソフトバンク・周東佑京【写真:冨田成美】
ソフトバンク・周東佑京【写真:冨田成美】

41盗塁で2年連続3度目のタイトルも…CSの前日会見で語っていた「重要」な鍵

 アーチが乱れ飛ぶ展開を、誰よりも早く“予言”し、的中させていた。球界屈指のスピードスターは「盗塁は必要ない」と語っていた。

 ソフトバンクは18日、日本ハムとの「2024 パーソル クライマックスシリーズ パ」ファイナルステージ第3戦に3-2で勝利し、4年ぶりとなる日本シリーズ進出を決めた。アドバンテージの1勝も含めて、3連勝での通算4勝負けなしで日本ハムを一蹴した。MVPに輝いたのは、3試合で3本塁打を放った山川穂高内野手だった。1つのプレーで流れが大きく変わる短期決戦において、重要なことを語っていたのは周東佑京内野手だ。

 第3戦、同点の4回2死一、三塁で周東が打席を迎えた。甘く入ってきたボールを逆らわずに左前へ弾き返す、貴重な勝ち越し打。そのままスコアは動くことなく、1点差で逃げ切った。今季は自身初の規定打席に到達し、打率.269、115安打を記録した。「今年は1年を通して、引っ張り一辺倒じゃなかった。これまでは(状態が)悪くなると強い打球を打ちたいと思って、引っ張りにいって変な打球が多くなってしまっていた」。2024年、貫いた信念は決勝打という最高の形で表れた。

 4年ぶりに日本シリーズへの挑戦権を手に入れた。2020年はコロナ禍の影響もあり、CSは2位・ロッテとのファイナルステージのみが行われた。同年のシーズンで50盗塁を決め、初タイトルを獲得した周東。当時の工藤公康監督からも短期決戦のキーマンに指名された。出塁して、自慢の足で相手にプレッシャーをかけること。今年のCSでも圧倒的な走力で相手をかき回すことが期待されたのは間違いなかったが、周東が考える「勝負の鍵」は違った。

「ホームランじゃないですか? 重要なのは。どのタイミングで、誰がホームランを打つかだと思います」

 両チーム合わせて3試合で計8本、ホークスからは6本の本塁打が生まれたファイナルステージ。「ギーさん(柳田悠岐外野手)もいて、1番にジーター(・ダウンズ内野手)がいて。打線自体が『すげえな』って思いました」と自らのチームながら、その破壊力に驚くしかなかった。MVPは3戦3発を放った山川。「(ホームラン)1本が、大きく戦況を変える。足でかき回すというよりも、ホームランを打てる人が打ってください、という話です」と、周東も語っていた。走者を返すのは長打力がある選手に任せる。人任せではなく、自分自身の役割が明確だったからこそ、出塁することに徹した。

 シーズンの全日程が終了して、周東は41盗塁で2年連続3度目のタイトルを掴んだ。パ・リーグでは3割打者が近藤ただ1人と、投高打低が目立った1年。盗塁について「難しいと思います。キャッチャーの肩も強いですし、クイックも速くなってきています」と、少しずつハードルが高くなっていることを実感している。そして、周東なりの持論を展開した。

「あとは、今の野球的に盗塁が必要なくなってきているのかなと思います。アウトになったらもったいないですし」

 近年、どんどんと野球が変化していることを感じ取っていた。ホームランが飛び出せば、自動的に得点が入る。野球のルールを考えても、本塁打こそもっとも簡単で、効率的な得点方法だ。「だって、パワー野球じゃないですか。リスクを犯して走る必要もない」と周東も認める。今季のパ・リーグでは503本のアーチが飛び出した。ホームランこそが試合を動かし、ファンを魅了する。それは時代を超えても変わらない価値観だ。

 リーグトップの盗塁数を記録したものの、周東にとっても常に状況を把握していなければならなかった。柳田、山川、近藤健介外野手、栗原陵矢内野手ら、ホークスが誇る強打者が自身の後ろに控えているからだ。「無理に走る必要もないんじゃないかと思いますし。今年はそれも考えながらやったところもあったので。状況を見ながらですけど。あとは(打者と)勝負してほしい時とか、長打がほしい時とかは自重しました」。盗塁という作戦が効果を発揮する場面のため、準備だけは怠らなかった。その結果、盗塁を「41」まで積み重ねることができた。

 15日に行われたファイナルステージの前日会見。周東は「圧倒的に勝ちたいと思います」と誓っていた。終わってみれば、無傷の3連勝。「僕らは3つで決めようと思っていましたし、初戦の勝ちが一番大きかったです。しっかり打てた、しっかり守れた。初戦が全てだったと思います」と振り返った。チームに勢いを与える豪快なホームランを含め、絶対に隙を見せないホークスらしい戦いだった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)