ギータが完全復活…柳町&正木の起用法は? 首脳陣が明かす“シビアなビジョン”「不平不満は話にならない」

ソフトバンク・柳町達(左)と正木智也【写真:矢口亨、栗木一考】
ソフトバンク・柳町達(左)と正木智也【写真:矢口亨、栗木一考】

優勝後も続く必死のアピール「僕としては消化試合ではない」

 チームにとって待望の“ギータ復帰”は、裏を返せば若手外野手にとってCSでの出場機会をかけた「サバイバル」を意味する。柳田悠岐外野手が9月30日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)で1軍の舞台に戻ってきた。もう万全だ、と言わんばかりに復帰後初打席で右前打を放つなど、その姿に安堵したファンも多いだろう。しかし、それは外野のスタメン枠が1つ埋まることでもある。

 柳田が5月末に右太もも裏を故障し、長期離脱して以降は、若手の成長がチームの力となった。9月16日のオリックス戦(京セラドーム)では、近藤健介外野手が盗塁の際に右足首を捻挫。周東佑京内野手も同28日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で二盗に失敗した際に左膝を痛め、柳田と入れ替わる形で登録抹消となった。

 開幕スタメンに名を連ねた外野手の相次ぐ離脱をカバーしてきたのが、柳町達外野手や正木智也外野手らの若鷹だった。3年目の正木は著しい成長を見せ、近藤の離脱後は5番に座る試合も増えた。2人の活躍があってこそ掴んだリーグ優勝とも言えるが、CSに近藤と周東が間に合うとするならば、その起用法はどういったものになるのだろうか。首脳陣のビジョンに迫った。

「ポジションはもう決まっているので、後はそこの良し悪し。(相手投手との)相性や状態を見てになると思います。最終的には監督に決めてもらいますけど、(どの選手を)今日は薦めますっていうのは相談しながら。守りのこととかも色々あるので、そういうのも含めた上で、総合的に見てかなと思います。どちらか(柳町、正木)が出られないことにもなると思います」

 こう語ったのは村上隆行打撃コーチだ。今季の正木は79試合に出場し、打率.272、7本塁打、28打点の成績を残している。昨年よりも大きく出場数を減少させたものの、柳町も72試合に出場し打率.269、4本塁打、40打点をマーク。幾度となくチームを救った勝負強い一打が印象的なシーズンだった(ともに成績は3日時点)。

 レギュラークラスの選手が戻ってくることは、チームにとって頼もしいことだ。それでも出場機会が減ってしまうピンチでもあることは、選手自身が一番分かっている。

「CSでもスタメンで出たい気持ちはありますし、そのためには打たないといけない。チームとしては(リーグ優勝後の試合は)消化試合かもしれないですけど、僕としては消化試合ではないので。1打席1打席を大事にしたいなと思います」。1日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)の後に、正木はこのように語った。

 危機感をのぞかせつつも、前を向きながらこう続けた。「ギータさんや、コンさんが戻ってきても、使いたいと思わせるような活躍を今すれば、(CSでも試合に)出してもらえると思います。死に物狂いで、1打席1打席を大事にやっています」。9月23日にリーグ優勝を決めて以降は、いわゆる”消化試合”だが、自身の立ち位置を理解しているからこそ出てきた言葉だった。

 柳田と共に、9月30日に出場選手登録された笹川吉康外野手も必死のアピールを続けている。再昇格以降は10打数4安打の結果(3日時点)。小久保裕紀監督は「レギュラークラスはもちろん頭から出ますけど、競っているところ(選手)は調子の良し悪しを見ている時間はないので。いいやつから使うっていう中では、CSのメンバーにということも考えようかなというぐらいの活躍ですね」と、さらなる外野手争いの激化に期待を寄せた。

「チームが勝つっていうところを見た時に、出られない選手も出てくるんですけど。それに不平不満を言ってたんじゃ話にならないので。出た時にしっかりと仕事ができるように準備しとくっていうのは、みんな同じなので。準備していくしかないですね」

 村上コーチもこう語り、柳町、正木らの奮起を願った。近藤と周東の状態次第では、当然スタメン起用もあり得るだろう。CSファイナル初戦の16日までにどのような状態でいられるか。各々が残り少ない日々をどのように過ごすことができるのかが、出場機会を得るためのカギになる。

(飯田航平 / Kohei Iida)