井口氏が2003年の投手陣を回顧「野手も援護したいと思う投球だった」
ダイエー(現ソフトバンク)やメジャーリーグで活躍した野球解説者の井口資仁氏がホークスを語るコンテンツ(不定期掲載)。第9回は「ダイハード打線」を擁し、リーグ優勝、日本一に輝いた2003年のホークス投手陣について。3年ぶりの優勝を果たしたこの年、破壊力抜群の打線が注目されたが、先発陣では斉藤和巳(現ソフトバンク4軍監督)が20勝3敗と大きな躍進を遂げた1年でもあった。井口氏は当時の斉藤の覚醒を野手目線で回顧した。
斉藤は1995年ドラフト1位で南京都高からホークスに入団。大きな期待をされながらも、怪我の影響などもあって2002年までの通算7年間で計9勝。武田一浩、工藤公康、若田部健一らベテラン投手が球団を離れ、投手陣の若返りも徐々に進んでいる時期でもあった。様々な背景が重なり、逸材の覚醒に繋がった。
「もともといいポテンシャルは持っていましたから。それが自信をもって投げられるようになった。ベテランが抜けていって、若い投手中心の先発陣で堂々と投げていたと思います。自分のペースで投げることができていましたよね」
当時のダイエー打線はプロ野球史上最高のチーム打率.297を記録。100打点以上が4人、1~3番打者で計100盗塁以上をマークするなど、その破壊力から「ダイハード打線」と称された。「和巳は『とりあえずしっかり試合を作れば勝てる』というのはよく言っていました」。ある程度のゲームメークをすれば、強力打線がしっかりとリードを奪う。打線が投手を育てた部分はあると思います」と井口氏は回顧した。
二塁の守備位置で後ろから見守っていた斉藤の“武器”は「とにかく気持ちが強いところです」と即答する。「絶対に負けない強い気持ちを持っている。くじけそうになったときも、強い気持ちでどんどん攻めるし、マウンドで何度も吠えていました。そういう姿を見ると、野手もなんとか援護したいという気持ちにはなっていました」。斉藤と野手陣の間にあった“相乗効果”に言及した。
若い投手同士で「負けないというのはあったと思います」
20勝3敗、防御率2.83で最多勝や最優秀防御率、最高勝率などに輝いた斉藤に引っ張られるように、2003年はルーキーの和田毅が14勝5敗、2年目の杉内俊哉が10勝8敗、新人の新垣渚が8勝7敗をマーク。打線が話題となっていたが、世代交代を遂げた投手陣の奮闘ぶりも優勝への大きな原動力となっていた。
「若い投手が揃っていたので、その中で負けないというのはあったと思います。チーム内でいいライバルであり続けることができるのはいいチームだと思います」
最強打線の得点力に支えられながら開花した投手陣。ついに覚醒を遂げた斉藤の圧倒的な投球は、これからの「投手王国」誕生を予感させるものだった。
(湯浅大 / Dai Yuasa)