超えなければならない壁に直面した。若き2人のチームリーダーは何を思うのか。ソフトバンクは7日、西武戦(みずほPayPayドーム)に2-3で敗れた。痛恨の逆転負けで、今季初となる4連敗。小久保裕紀監督も「今年一番苦しい時期が来たなって感じですね」と認めるしかなかった。チームの苦境において、選手会長の周東佑京内野手と栗原陵矢内野手は、2人だけで交わしている会話があるという。
まずは初回、先頭の周東が相手先発の今井と相対した。真っすぐをはじき返した打球は左中間を真っ二つ。果敢に三塁を狙い、惜しくもタッチアウトとなったものの、これでキャリア初となるシーズン100安打目をマークした。痛恨の敗戦に笑顔はなかったものの、今季こだわってきた安打数が1つの節目に到達。栗原も2安打と気を吐き、1点を追う9回無死では右中間に二塁打を放ってチャンスを作り出した。
リードオフマンとしてチームを引っ張ってきたスピードスターは、今季から選手会長に就任した。チームの先頭に立つ立場となり、2024年を迎えた。5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)で柳田悠岐外野手が離脱した時には、「僕とクリで頑張っていかないといけないです」と発言していた。「一番苦しい時期」を、選手会長としてどのように見ているのか。
「勝っていないですし、そうなんじゃないですか」と第一声。その上で、雰囲気は「重く見えますか?」とも首を傾げていた。2位の日本ハムが勝利して、7ゲーム差となったこの日。小久保監督は、9月にしかない重圧があるとも話していた。周東も2020年のリーグ優勝&日本一に貢献するなど、終盤戦の戦いは経験している。4年前も踏まえて、日本ハムとの差はいい意味で“見ていない”という。
「あの時(2020年)は、この時期から勝っていましたし、状況は違うんじゃないですか。4年前は(2位ロッテに)0(ゲーム差)に並ばれて、今回はある程度のゲーム差がありますから。やっている選手はゲーム差があるとか、ないとかは意識していないですけど、僕らが勝ったらマジックは減るっていう感じでやっています」
6日の西武戦が終わった後、周東と栗原は、2人で一緒にドームの駐車場へ歩を進めていた。会話の内容についても「気づきの中で『もっとこうしておけばよかったのかな』っていうのは話しました」と明かす。今後のチームを引っ張れるようにならないといけない。そう周東が名前を挙げていた“相棒”とのやり取り。「そこは変わらないです。(僕とクリが)引っ張るというのもアレですけど、やることをやっていくことがもう1回、大事になるんじゃないですか」と、苦境だからこそ足元を見つめた。
栗原も「佑京さんとは、ロッカーとかで話もしますよ。全てがうまくいくことではないので、その時その時に、一緒に考えながらです。次にしっかりとチームを引っ張っていく2人だと思っているので、なんとかこういう時に2人で頑張りたいです」と言う。この日の初回、周東が三塁でアウトになりベンチに帰っていく際、栗原に声をかけていた。「佑京さんにナイスバッティングって言っただけですよ」と言うものの、細かいコミュニケーションは2人の中でも重ねてきたつもりだ。
16本塁打を放ち、三塁手としても3番打者としてもチームの中心になってきた。今の雰囲気について「なかなか難しいですね。優勝が近づくにつれて1打席の緊張感もありますし、試合に入る難しさもある。そんな甘くないなって感じです」と語った。2020年の日本シリーズではMVPを獲得し、国際大会も経験してきたが「(プレッシャーは)しっかりと感じています」と、主力としてチームの勝敗を背負っている。春先から首位を走ってきたが、これも勝負の秋ならではの緊張感だった。
周東も「勝つのは簡単じゃないなって思います」と同調した。2022年はあと1勝で優勝を逃し、昨年はクライマックス・シリーズで敗退した。この時期の怖さも難しさも知っているだけに「それは毎年感じているところかなと思います。毎年、この時期は優勝争いがありましたし。勝ちきれないシーズンが続いている中で、ちょっとはよぎりますけどね。『今年もか』って。そこはなしにして、やることをやろうかなと思います」。苦い思い出を上書きするために、何度だって言う。優勝しかない。
打開策は、清々しいほど明確だ。「勝つことが一番の薬です。1年間家族にも支えられてやっていますし、僕らが勝てば家族も喜ぶと思います」。自力で、優勝という最大の目標に近づいていく。チームを背負う使命をハッキリと理解しているから、周東と栗原が先頭に立つ。