ユニホームに鮮血もコーチを阻止「降板はできない」 中継ぎ転向も…笠谷俊介の現在地

ソフトバンク・笠谷俊介【写真:竹村岳】
ソフトバンク・笠谷俊介【写真:竹村岳】

駆け寄ろうとするコーチを制し、1イニングをわずか7球で3者凡退

 ユニホームに血が付こうとも、任されたイニングを投げ抜いた。ソフトバンクの笠谷俊介投手は4日のウエスタン・広島戦(タマスタ筑後)に3番手で登板。「(マウンド上での)投球練習中に(爪が指に)引っかかってしまって、そこから血が出ました」と、アクシデントを抱えた中での投球となった。

 コーチがマウンドに駆け寄ろうとしたが、それを制した。「抑えた抑えないを、そのせいにしたくないし。だからそんなに気にはしてなかったです」。結果は3者凡退。1イニングをわずか7球で抑えた。

 10年目の今季は先発挑戦を掲げてスタートした。しかし、シーズンが終盤戦に差し掛かる中で1軍への昇格は一度もなく、現在は2軍で中継ぎ調整を続けている。流血しながらも投げ抜いた理由と、中継ぎとして腕を振ることになった覚悟を口にした。

「(出血箇所は)皮が薄い部分だったし、ただ血が出ていたというだけの認識なので、僕は。抑えた抑えないを、そのせいにしたくなかったし。だからそんなに気にはしていなかったです」

 マウンドを降りなかった理由を笠谷はこう明かした。駆け寄ろうとしたコーチを制したのは「血はめっちゃ出てたんですけど、この回を任されたし、こんなことで降板はできないなっていう思いはあったので。それで大丈夫ですみたいな感じでした」。交代するほどの怪我ではないと自身で判断した部分もあるが、与えられたチャンスをモノにしなければならない、そんな思いがあったという。

 笠谷はここまで2軍戦で17試合に登板。59回を投げて32四死球と、制球に課題を残している。「投げる度に遠心力がかかるから、血がめっちゃ出てボールが滑るんです。毎回拭いていたら、めっちゃ(ユニホームに)ついたみたいな感じですね」。コントロールを意識し、少しでもボールを握る感触を失わないようにこまめに血をぬぐった結果、ユニホームに血がついたという。

 多くを口には出さないが、自身の立ち位置は理解している。球団は7月24日に石塚綜一郎捕手、中村亮太投手、三浦瑞樹投手、前田純投手と支配下選手契約を結んだ。4選手中3人が投手。1軍を目指すライバルは一気に増えた。さらに、三浦と前田純は笠谷と同じサウスポー。限られた枠の争いは激化した。

「他の人はあまり関係ないので。判断は周りの人がすることだし、やるべきことをしっかりやっていけばいいかなと思っています」。こう語るが、支配下選手となった三浦は現在、1軍に帯同。危機感は当然あるはずだ。

 そんな中での中継ぎへの転向だった。「倉野さんから『後半戦は中継ぎで行こう』みたいに言われたので。『チームのためになるんだったら僕はそれで行きます』って伝えて、そうしました」。勇気のいる配置転換を決断した理由をこう話す。

「まだシーズンは終わっていないですし、いつチャンスがくるかわからないですけど。自分のやるべきことしっかりやっていれば、結果は出てくるなとは思うので。それでも意識していないっていうわけではないですけどね」

 流血しても投げ抜いた気持ちと、中継ぎに挑戦する姿。少しのチャンスも逃すことができない――。今の笠谷からそんな覚悟が伝わってくる。

(飯田航平 / Kohei Iida)