打率0割台も揺るがない評価…「今の姿を続けてほしい」
無安打でも首脳陣の評価は揺るがなかった。ソフトバンクは27日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)で野村勇内野手を「2番・二塁」で起用した。「最近あまり良くなかったので、少しでもチームの力になれるようにやろうと思いました」。自身がそう語るのは、思うような打率を残すことができていないからだ。
試合開始前に.100だった打率は2打数無安打で「.094」になり、1割を切ってしまった。それでも試合後に首脳陣は27歳のプレーを高く評価した。9試合ぶりにスタメンで起用することを決めた理由と、野村に見えた変化を明かした。
「ヒットは出なかったですけど、(これまでは)ヒットが出なかったからコロコロと変えていた子なので。(8月20、21日に楽天戦があった)仙台から練習の姿がすごくいいので、今の姿を続けてほしいですね」
こう語ったのは小久保裕紀監督だ。27日のオリックス戦。先発は左腕の田嶋だったが、野村を起用したのは右打者だからという理由だけではなかった。必ずアーリーワークに参加するなど、課題の打撃をなんとか改善しようとする姿勢があったからだった。
野村自身も「バッティングでやろうとしてることが練習ではできていたので。それを試合でそのままやってくれっていうことじゃないですか」と起用された理由を自己分析していた。
この試合の4打席で安打を放つことはできなかった。それでも首脳陣の評価が変わらなかったのは、自身の仕事を全うしたからだ。そのシーンは5回の第3打席に見られた。
先頭の今宮健太内野手がライト線を破る二塁打を放ち、無死二塁で打席に立った野村に送られたサインは送りバントだった。2点のリードがあったが、追加点が欲しい展開でプレッシャーもかかる場面。それでも「結構バント練習をしていたので、いけるかなって感じで。自信はありました」。セオリー通り、三塁手に打球を処理させる犠打をきっちり決めた。
「本当によく決めてくれましたよ。試合前にもこういう状況を想定して練習してくれていたので」。こう話すのは奈良原浩ヘッドコーチだ。野村が様々な場面を想定したバント練習を日々繰り返していることを知っていた。「もちろん1軍に必要な戦力なので、これを自信にしてほしいなと思います」と更なる奮起を期待する。
一つの送りバントだったかもしれないが、成功させるか失敗するかでは今後の起用にも影響があったはずだ。「少しでもチームの力になれるように」。得点には繋がらなかったものの、野村の日々の準備と姿勢は大事な場面でも首脳陣が起用したいと思えたものだった。
バックスクリーンに表示される打率は当然、本人の目にも自然に入ってくる。「見えますね(笑)。でもしゃあないんで、そこは。1日1日をなんとか。できるだけやと思ってるんで。もうしゃあないんで。ここから巻き返したいなと思います」。目の前の仕事を全うすることが、首脳陣とチームの信頼につながっていく。与えられたチャンスに野村なりの結果で応えていく。
(飯田航平 / Kohei Iida)