周東も唖然…“バット投げ打”はなぜ生まれた? 甲斐拓也が明かした真相

7回にタイムリーを放ったソフトバンク・甲斐拓也【写真:栗木一考】
7回にタイムリーを放ったソフトバンク・甲斐拓也【写真:栗木一考】

栗原も驚いた甲斐の打撃

 執念の“バット投げ”がチームを勝利に導いた。18日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。1点リードで迎えた7回、1死三塁で打席に立ったのは甲斐拓也捕手だった。カウント2-2から外角に外れたスライダーを果敢にスイング。放り投げたバットに当たった打球は三遊間を破り、リードを2点に広げる貴重な適時打となった。なんとかバットに当てようとする思いが、“曲芸打ち”を生み出した。

 この試合、今季初先発の松本晴投手がロッテ打線を5回まで2安打無失点に抑える好投を見せた。5回1死で、牧原大成内野手が1号ソロを右翼席に運び先制。9回に登板した松本裕樹投手が押し出しで1点を失ったが、チームは何とか逃げ切って松本晴は嬉しいプロ初勝利を手にした。

 試合後、小久保裕紀監督も「拓也がバットを放り投げながらでも、なんとか当てて。あの1点が結果的に大きかった」と頷いた。執念でもぎ取った貴重な追加点。甲斐本人はどのような気持ちで打席に向かったのだろうか――。

「(無死二塁で)達(柳町)がああいう形で送ってくれて。そこはなんとかできたと思います。(バット投げは)もう1回やれと言われてもなかなかできないとは思うんですけどね」

タイムリーに喜ぶベンチの様子【写真:栗木一考】
タイムリーに喜ぶベンチの様子【写真:栗木一考】

 適時打のシーンを、甲斐は照れ笑い気味に振り返った。7回、先頭打者の正木智也外野手が二塁打で出塁すると、続く柳町達外野手は、バスターによる二ゴロを打ってランナーを三塁へと進めた。なんとしてでも進塁打を打とうとする柳町の姿勢と、プロ初勝利が目前に迫っていた松本晴の気持ちに応えたい思いがあったという。

 甲斐がバットを投げて安打を放ったシーンについて、周東佑京内野手は「最高です。わけわからないです。できるわけないです。最高です」と話すと、栗原陵矢内野手も「凄いです。あれ凄いです」と笑顔で勝利を喜んだ。

「ランナーを返したいっていうだけでした。なんとかバットに当てて、前に転がすことができればなっていう思いがあったので」。どうにかしたい――甲斐の必死の思いが、ナインも驚く安打につながった。

 10日から始まった酷暑の中での9連戦。この日の勝利で、6勝3敗と見事に勝ち越すことができた。甲斐のスタメンマスクは9試合中7試合で、5勝2敗。バットでもマスクでも力強くチームを引っ張る甲斐拓也の存在はこの先も欠かせない。

(飯田航平 / Kohei Iida)