完璧なポジショニング…牧原大成が“そこにいる” 失点を防いだ「本多コーチ」の存在

ソフトバンク・牧原大成【写真:栗木一考】
ソフトバンク・牧原大成【写真:栗木一考】

3回2死二、三塁のピンチ…ポランコが放った打球は二直となった

 1球ごとに、状況と打者を見て判断する。積み上げた経験値が見せたのは、まるで“そこにいる”かのようなポジショニングだった。ソフトバンクは16日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)に4-0で勝利した。柳町達外野手と山川穂高内野手が2者連続本塁打。先発の有原航平投手が完封勝利を挙げた中、“隠れた”好守が光ったのが、牧原大成内野手だった。背景にあった、ベンチと交わしていたコミュニケーションと思惑に迫る。

 初回1死二塁から柳町が先制の2ラン。続く山川も左中間に27号ソロを放ち、流れを掴んだ。先発の有原はここまで10勝を挙げていたものの、前回、前々回の登板では6失点。今度こそチームを救うつもりでマウンドに上がっていた。3回にピンチを迎える。2本のヒットで1死二、三塁とされて、荻野をツーシームで三ゴロに打ち取る。ここで迎えたのが、ポランコだった。

 昨シーズン、有原はポランコに対して10打数5安打、3本塁打を許している。初球のチェンジアップが外れると、2球目だった。バットの先で拾われた打球はライナーとなったが、二塁へのライナーに終わった。牧原大は横にはほとんど動かずに、少し背伸びするようにして捕球した。どのような意図で、ポジショニングを取っていたのか。名前を挙げたのは、本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチの存在だ。

「色々と本多コーチとやり取りしながらという感じでした。あの時も自分でデータを見ていて、それと違う時は本多コーチから言ってもらったりしています」

 同期入団の甲斐拓也捕手も、打球方向について「『この選手はこっちかな』とか聞いてきたり、マッキーも相当準備しています」と話すなど、牧原大の守備へのこだわりは誰もが知るところ。自分の感覚を大切にしつつ、周囲の意見にも耳を傾けて最善を探している。「それだけアウトにしたいですし、自分の中で守備のことは考えています」という思いが、この日もバッテリーを救った。

 本多コーチは「ナックル(みたいな打球)やったね」と笑顔で話す。ベンチから送っていた指示はどんなものだったのか。

「ポランコの“対有原”っていうのを見て、寄っていました。彼は引っ張り傾向の時もあるし、1つ1つのスイングに対してどういうふうに(打ちに)入っているのかどうか。ベンチから見ている目と、守っている人の目は多少違う。だから、その時のバット、スイングの軌道とか、球種に対する合わせ方で『そんなに寄らなくてもいいかな』って、1球1球、変えていました。こっち(一、二塁間)に寄っていても追いついたと思いますけどね。ちょうど(二遊間側に)寄らせた時だったじゃないかな」

 静かに進んでいるように見える試合中。内野手とベンチでは常に打者と状況を考えて、最善のポジションを擦り合わせている。ポランコの場面では、本多コーチから「もう少し二遊間側でいい」という指示が出ていたそうだ。「ポランコは一、二塁間に打つ傾向があるけど、全部が全部じゃない。球種によって変えてくるし、だから彼はレフトフライが多いでしょ?」。ポランコの有原に対するアプローチに注目し「三振を取りに行く球なのか、外からのカットボールなのか(でも違う)。引っ張るだけがポランコじゃないよっていう」と、まさに狙いが的中した。

 ファンが喜ぶようなファインプレーはもちろん、当然のように打球を処理するのも守っている野手の醍醐味。現役時代、ゴールデングラブ賞を2度獲得した本多コーチも、牧原大をはじめとした内野手との意思疎通は絶対に欠かさない。

「ポジショニングって100%合うわけじゃない。投手の心境だったりもあるし、そこに投げても打者の軌道が違ったりはする。絶対にわかるものではないですけど、確率的にはそっちの方が飛ぶんじゃないかな、とか。点差や投手の状況を考えてここは抜けてほしくないとか、1イニングごとに変わるのが野球です。『絶対的に』(こっちに打球が来ると予想する)っていう時は、僕たちから指示します」

 有原が野手に「すごく投げやすいですし、心強い」と頭を下げれば、牧原大も「ポジショニングが良かった時は、捕球できて良かったなって思いますね」と、誇らしげだった。毎試合、全員が力を合わせて、最後までアウトを掴もうとしている。

(竹村岳 / Gaku Takemura)