リーグトップの勝ち星を挙げる中、不本意な投球が続いてしまった。ソフトバンクの有原航平投手は10日の楽天戦(みずほPayPayドーム)に先発したが、3回6失点で5敗目を喫した。「これだけ早くマウンドを降りてしまい、チームにも中継ぎにも申し訳ないです」と唇を噛んだ。この日の調子の中でも必死に楽天打線に向き合っていこうとした中で、7安打を浴びながらもベンチがタイムを取ることはなかった。その理由を、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が明かす。
初回2死二塁で4番・鈴木へのカウント1-1から投じた3球目。チェンジアップが少し高めに抜け、右中間へ2ランを許した。2回にも、1番・小深田にまたもや抜け気味のチェンジアップを強振され、2ランを浴び苦しい展開。3回にも適時打で失点するなど、立て直すことができず、3回を7安打6失点でマウンドを降りた。
前回登板の日本ハム戦(3日、みずほPayPayドーム)でも7回6失点。ここまで10勝を挙げるなど大黒柱としてローテーションを支えてきたが、2試合連続での大量失点となった。ホークス2年目で最短KO。早い段階でベンチが降板を告げた意図を、倉野コーチが明かした。
「立ち直る兆しがあまりなかったかなと。それだったら、早めにね。変にダメージを大きくする前に、次の登板に向けて早めに切り替えた方がいいとは思いましたね、僕は」
気になったのは、有原が7安打2被弾を許しながらも、倉野コーチは1度もタイムを取ることなく、マウンドに行かなかったことだ。その意図について「行こうと思うタイミングはその後にあったんです。いつも、どのタイミングで行くかっていうのは計算しているんですけど。行こうと思ったタイミングで抑えたりはしていたので。行かないって決めてたわけではない」と説明した。首脳陣にとっても、それほど有原の状態を慎重に見極めようとしていたということ。正確に“今日の有原”を把握する前に点差は開いてしまい、タオルを投げることになった。
「前回はそんな感じ(制球できていない)じゃなかったんですけど。前回はちょっといろんな要因っていうのはあったんですけど。今日はまだ内容については話ができていないので、何が原因なのかもわからない。今季初めてですからね、ああいう形で(降板に)なったのは」
試合直後ということもあり、有原自身も「要因はわからないです」と言う。その上で「技術不足なんじゃないですか。そこに投げられていないので、結局は。休みはもらっていますし、疲れというよりは、そこにしっかり投げられていない」と続ける。今季18試合目の登板。2017年にはキャリアハイの28試合に登板し、169イニングを投げた右腕は、疲労をキッパリと否定した。今は復調してもらうことだけを信じて、またチャンスを与えるしかない。
「全体的に(野手が)守ったところに(打球が)行っていないので、ああいう結果に。前回もそうですけど、本塁打は大量失点になってしまうので、そこは反省しなきゃいけないなと思います」
小久保裕紀監督が「経験のあるピッチャーなので、当然次の登板もありますので」と言えば、倉野コーチも「修正できなかったっていうことですけどね。信頼は変わらないので、次絶対にやり返してくれると思っています」と、首脳陣の期待は変わらない。
この日ホークス投手陣は13失点を喫したが、一部の中継ぎに対しては、「投げられたピッチャーは良かったんじゃないですか。本来ならね、有原が7回、8回っていう想定はしていましたけど、運用に関しては計算が狂ったとかは全くないですね」と倉野コーチ。過酷な9連戦は黒星スタートとなったが、明るい材料も見出していた。