同じ150キロでも「ゆっくり見える」 明石コーチが語る牧原大成…2軍で見せた“格の違い”

ソフトバンク・牧原大成【写真:竹村岳】
ソフトバンク・牧原大成【写真:竹村岳】

8日のロッテ戦では2安打2打点の活躍…「なんとか1本出したい気持ちで」

 直球にめっぽう強い。本人にとっては1軍に昇格するまでの通過点ではあったが、確実に“格の違い”を見せつけた期間だった。ソフトバンクは8日のロッテ戦(ZOZOマリン)に6-3で勝利した。相手先発は佐々木朗希投手だった中、攻略の大きな鍵となったのが牧原大成内野手だ。あらゆる面からチームを支える柱について、明石健志2軍打撃コーチが語る。「同じ150キロでもゆっくり見える」という言葉の真意に迫った。

 牧原大は8日のロッテ戦で「1番・二塁」で先発。初回先頭で、まっさらな打席に入ると、1球目の直球をライトに運んだ。2回2死一、三塁でもフォークを右中間に運び、2点二塁打で主導権を握った。今カードで2度目のヒーローインタビューに選ばれ「なかなか点が取れない投手なので、なんとかここで1本出したいという気持ちで打席に入りました。今年全然なれていなかったので、ヒーローになれてよかったです」とマイクを握った。

 小久保裕紀監督は過去、直球に強い選手について「現役やと牧原。あとは健志やね」と真っ先に2人の名前を挙げていた。牧原大は4月28日に右脇腹を痛めて登録抹消となった。復帰戦は6月22日で、その後はウエスタン・リーグでは6試合に出場して打率.412という成績を残した。そんな牧原大の打席を見ていた明石コーチは、他の選手と比べても投手の球が「ゆっくり見えた」という。

「2軍で打てない限りは、1軍で絶対に打てないです。1軍の選手がこっちに来たら、それは打ちますよね。(牧原大の打席を見ていると)ピッチャーがボールを投げてキャッチャーに届くまで、150キロとかでもすごくゆっくり見えます。『タイミング取れているんだな』って思いますし、まずはそこが違いましたね」

 打撃においてタイミングは大切なポイントの1つ。同じ150キロでも、若鷹はファウルにしてしまったり、刺し込まれたりなど、対応に苦労していたという。その中で1人だけ「ゆっくり見える」ほどのアプローチを見せていたのだから、すぐに1軍に戻った。実績も豊富な牧原大。それだけ試合前から準備を徹底していたことは、言うまでもないだろう。2軍戦において首脳陣から具体的な指示を与える必要がなかったのは、自分だけの形ができあがっていたからだ。

「目付けとか、色々と(意識していることは)あると思うんですけど。この球をどこに打ちに行くとか、この球をどういうタイミングで打ちに行くのかとか、マッキーは『こういう打席にしたいんだろうな』っていうのが、外から見ていてもわかります。僕らが見ていても、イメージが湧きました。この球をどこに打ちたくて、その中でこのコースをケアしてファウルにしようとしているんだろうな、とか」

 明石コーチは言う。直球も変化球も見逃して、最後はボールになる変化球を振らされて凡退する若鷹を何度も見てきた。「逆にイメージが湧かない選手もいますから。『え、何したいの?』『何待ってたの?』っていう」。勝利よりも、育成が求められる2軍という場所。「三振しても、三振は悪いことじゃない。どういう打ち方、アプローチをしたくて三振をしたのか」と結果はもちろん、濃い内容を首脳陣も求めているからこそ、牧原大がとにかく目立って見えたというわけだ。

 管轄外ではあるが、二塁を守っている姿を見ても「それは違いましたよ。いろんな引き出しがありますよね」と表現する。相手打者の特徴を頭に入れて、捕手のサインを見る。打球方向を予測してポジショニングを取るというのを、牧原大は当然のようにやっていた。「だから源田(壮亮)とか、健太(今宮)もそうですし。そういうのって教えるというよりも自分の嗅覚で得ていくものですし、センスがある選手ってもう中学くらいからやっていますよね」。現役時代、ユーティリティプレーヤーとして活躍した明石コーチだから、説得力がある。

 10日からは9連戦が始まる。牧原大は「熱中症にならないように、しっかり水分を摂って頑張りたいと思います」と誓った。8月打率.474と確実に上昇気流を描いている。苦しい夏場を乗り切ろうとする中心に、牧原大がいる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)