1死も取れず3失点から一夜明け“即リベンジ” 「大事な登板だとわかっていた」
指揮官の一言で自らの「原点」を見つめなおした。7日のロッテ戦(ZOZOマリン)。7回のマウンドに立ったのは2試合連続登板となった津森宥紀投手だった。最速153キロの直球を軸に相手打者を力押しする投球で1イニングを無失点。その表情は闘争心にあふれていた。
前日6日の同戦では5点リードの9回に登板した右腕だったが、先頭から安打と四球で無死一、二塁とすると、代打のポランコに甘く入ったスライダーを仕留められ、3ランを被弾。1死すら取れずに交代を言い渡された。試合には勝利したものの、取材に対応した小久保裕紀監督の口から出たのは右腕への苦言だった。
「津森が上がった時になんか緩いなと思っていたら、やっぱりそうなるよね。まあ勝ったやろ、今日はみたいな」。隙が見えたかとの問いかけには「俺にはそう見えたね。なんかフォーク引っかけてニヤニヤ笑いながら。あっと思ったらそうなったんで。大いに反省してほしいです」と言い切った。指揮官の言葉を津森はどう受け取ったのか。
「(小久保監督から)そう見えてしまったってことは、本当に反省しなくちゃいけない。次があったら絶対にしっかり投げようと。(7日の投球は)もちろん自分にとって大事な登板という意識はありましたし、一番はしっかりとゼロで抑えようと。それだけでした」
ルーキーイヤーの2020年からの登板数を14→45→51→56と右肩上がりに伸ばしている右腕は、今やチームにとって欠かせない存在だ。今季は通算200試合登板をクリアするなど、ここまで38試合に登板して防御率1.57。キャリアハイと呼べる数字を狙える位置にいる。
本来のスタイルは打者に臆することなく、内角を突いていくスタイルだ。胸がすくような真っ向勝負が身上なだけに、小久保監督の目には6日の投球が「原点」から離れているように映ったのだろう。
「僕自身は毎試合毎試合、全力で行くスタイルだったので。改めて確認させられたという感じです」。昨年のクライマックスシリーズファーストステージ第3戦では、3点リードの延長10回にまさかの同点3ランを浴びて涙を流すなど、プロ生活5年間で何度も悔しい思いを味わってきた。それでも右腕は「なにくそ魂」で立ち直ってきた。
過去の失敗を消すことはできないが、再び歩き出すことはできる。指揮官から苦言を呈されても、すぐさま本来の姿を示した。「今年は優勝という明確な目標も見えているので。あの姿を継続してやっていけたらと思っています」。原点を思い出した右腕は、最後の瞬間までチームのために全力で腕を振り続ける。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)