青学大、ホークスで共に戦った井口資仁氏が小久保監督を“分析”
ダイエー(現ソフトバンク)やメジャーで活躍した野球解説者の井口資仁氏が、ホークスを語るコンテンツ(不定期掲載)。第7回は「小久保裕紀という男」。青学大の先輩に当たる小久保監督の人間性、さらには小久保采配に見える“王貞治イズム”について語った。
大学1年時の井口氏にとって、4年生で主将を務めていた小久保監督は特別な存在でもあった。チームとして全体練習の時間は決して長くないが、その分、自主練で考えたメニューをこなすことを求められた。見ていたのは主将の背中だった。
「とにかく練習量がすさまじかったです。僕は小久保さんを見て、これだけ練習しないとプロには行けないんだと思いました。(全体練習が)終わってからの自主トレですよね。打ち込む量にしても、ウエートにしても」
ホークス入団後、小久保監督の野球に対するストイックさはさらに増していた。「ホークスの頃は一番最後まで、暗くなっても黙々と打っていましたからね。チームの4番がそれだけ練習するんだから、若手だった我々ももっとしないといけないですよね」。
小久保監督の入団2年目となった1995年に王貞治監督が就任。秋山幸二とともに“王イズム”の継承者としてチームを支えた。そのメンタリティは現役引退後、指導者となっても小久保監督の根底にあるはずだと井口氏は語る。
「小久保さんが監督として、王会長の影響を受けている部分はもちろんあると思います。一緒にやった人はおそらくみんな受けているのではないでしょうか。城島(健司)も今は球団会長付特別アドバイザーになっていますけど、(王会長から受けた影響は)あると思います」
小久保監督の下で「選手たちも引き締まっている」
勝利へのこだわり、1球への執着心、練習態度、ファンサービス……。あらゆる面でホークスに浸透する“王イズム”。その体現者として、チームの先頭にいた小久保監督は指揮を執る現在も貫いている。
「本当に努力を惜しまない方なので。しっかりと準備をして(何事にも)臨む。すべてに配慮できる監督ですから、選手は本当にやりやすいと思います。ただ妥協は絶対に許さない人なので。小久保さんの現役時代の姿勢はみんな見たり、聞いたりで知っていると思うので、その辺りは選手たちも引き締まっているんじゃないかなと思います」
小久保監督は今季、一貫して山川穂高内野手に4番を任せている。自身も現役時代、王監督からほとんど4番で起用され続けた。“王采配”と重なる部分でもある。
「基本的に4番はチームで一番信頼のおける人が打つ場所ですから、そこは揺るがないんじゃないですかね。小久保さんはあまり変えたがらない人ですし。ヘッドコーチをやっている時からあまり変えたがらない人だった。その辺は選手を信頼して使っているというところだと思います。4番はチームの顔ですから。あまりその打順をいじる監督ではないと思います」
柳田悠岐外野手は怪我で離脱したが、近藤健介外野手を含め、打線の中心は揺るがない。「軸がぶれることなく、しっかりしていますから。監督としてはその周りの上位と下位打線をどうするか、そこだけだと思います。あの2人(近藤、山川)がぶれなければ、ある程度は周りに何かあってもカバーできると思いますし、そこは大きいですよね。2人に加えて栗原や周東もいるので」。揺るがない打線の軸、さらに周りを固めるメンバーにも優秀な顔ぶれが揃う。層の厚いソフトバンクの強さでもある。
体力勝負の後半戦が始まった。きつい時期をいかに乗り切るかがどのチームも重要になってくる。「ホークスはドームのチームなので特に心配ないと思います。今は栄養管理師もついて、食事の面もしっかりサポートできていますし。とにかく怪我人を出さないこと。後半にどれだけベストに近いメンバーに持ってこれるかでしょうね」。井口氏はソフトバンクの優位が揺らぐことがないと確信している。
(湯浅大 / Dai Yuasa)