周囲の「あるぞ」の声…新外国人獲得で潰えた“あと1枠”への夢 勝連大稀が吐露した胸中

ソフトバンク・勝連大稀【写真:竹村岳】
ソフトバンク・勝連大稀【写真:竹村岳】

7月30日に潰えた支配下の夢「期待は4年間の中で1番していました」

 最後の1枠を最後まで狙っていた。周囲から聞こえてくる声に期待する自分もいた。ただ、勝連大稀内野手に昇格の知らせが届くことはなかった。7月30日にジーター・ダウンズ内野手の加入が決定。これでソフトバンクの支配下登録選手は上限の「70」人に。残る育成選手たちにとっては、今季中の昇格の夢が潰えた瞬間だった。

 この日、タマスタ筑後では3軍戦が組まれていた。試合が無かった2軍からも複数の選手がこの試合に参加していた。勝連は、この試合前に“70人目”が埋まったことを知った。

「日曜の試合後も『(支配下登録)あるかもしれんぞ』みたいな感じになっていたんで、あるかなと思ってたんですけど……」と、正直な胸の内を溢す。ダウンズを獲得したように、内野手はチームの補強ポイントだった。勝連は遊撃を守れる貴重な人材で、スタッフ、コーチ陣からも、支配下登録を期待する声は確かにあがっていた。

「なんて言うんですかね、期待されているというか『チャンスはあるぞ』っていうのはもうずっと言われてきてて、7月後半になって、最近も『あるぞ』『怪我だけはするなよ』みたいな感じで言われたんで、少し期待はしてたんですけど……。(今年は)4年間で1番(支配下に)なれるなって思っていたんで、期待は4年間の中で1番していました」。無情にも最後の枠が外国人補強に使われることになり、少しばかり落胆したのも事実だ。

 ただ、勝連はすぐに前を向いた。「別に支配下になれなかったからって、これで終わりっていうわけじゃないので。ここからアピールして、野球はホークスだけじゃないですし、他のところもありますし、自分のやるべきこと、自分が上手くなっていくために頑張っていたら、いいことがあるかなと思うので。モチベーション的にはそんなに落ちずに、ここからも頑張っていこうかなと思っています」。

 この日行われた3軍戦でも、気落ちした様子は微塵も見せずにプレーした。「そんなにいつもと変わらないモチベーションでできたかなと。別にやってやろうとかもあんまりなくて、いつも通りやろうかなって」。今季は2軍で28試合に出場し、打率.250。課題とされてきた打力では一定の結果を残した。もともと守備や走塁では評価されてきた。求められた役割をしっかり果たし、貢献度も高かった。

「守備には自信があったんで、それでも(支配下に)なれなかったっていうことは、やっぱもっと打たないといけないなっていう風に思います。バッティングがいい選手を獲ったってことで、納得はできたので。自分と同じぐらいの打率で守備に定評ある選手とかだったら、余計に悔しいですけど。そこはもうバッティングが足りなかったんだなっていう風に割り切れたんで、その面では良かった」

 チームが最後の1枠に求めた役割を理解し、しっかりと受け止める。支配下登録は掴めなかったが、自分の成長は実感している。「バッティングは今まで2割に満たない打率だったんですけど、率も上がったし、率以外の内容でも自信を持って取り組めているなっていうのを試合でも感じます」と語る表情には手応えが滲む。

 シーズン中の支配下登録がなくなった今、勝連は下を向くことはない。「ポジティブなんですかね。なんかいい方向に考えられるんですよね。『支配下になれなかった』とか一瞬は落ち込むんですけど、よく考えたらいろんな道があるかもって考えられるというか……。そういう風に考えたら、ならなくてもよかったっていう道もあるかもしれないと思えるんで、まだまだ野球続けていけるように、また頑張ろうかなって」と、笑みさえ浮かべた。

 もちろん、ソフトバンクで活躍するのが1番だが、それ以外の道もある。どこであっても野球をしたい、その気持ちが勝連の原動力になる。先日、寮の食堂のテレビで、社会人野球の都市対抗野球が流れていた。「もしプロ野球が終わっても、社会人とかに行って40歳ぐらいまで野球やりたいなって。都市対抗、普段見ていなかったですけど、食堂で見て『レベルたかっ』と思いました。いろんなところで野球できるんだなと思って」。それも1つの刺激になった。

「野球はしたいですね、ずっと」。根底にあるのは“野球が好き”だという気持ち。情熱がある限り、目の前の野球に懸命に取り組むことはやめない。見てくれている人はきっといる、そう信じている。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)