泣きながら伝えた引退「悠岐がいなかったら…」 連れ出した千葉の夜…福田秀平が語る親友ギータ

引退会見を開いたくふうハヤテ・福田秀平【写真:福谷佑介】
引退会見を開いたくふうハヤテ・福田秀平【写真:福谷佑介】

落球して失意にくれる…柳田をなかば強引に食事に連れ出した千葉の夜

 ソフトバンク、ロッテでプレーしたくふうハヤテの福田秀平外野手が1日、今季限りでの現役引退を表明した。18年間の現役生活に終止符を打つことを決めた福田が「鷹フル」の単独インタビューに応じ、親友である柳田悠岐外野手への思いを語った。泣きながら伝えた引退報告、2人にとって忘れられない思い出など、なかなか語られることのない2人の関係を明かした。

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 引退会見でも、そしてこのインタビューでも、言葉に詰まり、瞳が潤んだ。同級生のこと、特に柳田の話題になると、感極まった。ともに切磋琢磨し、プライベートでも膨大な時間を過ごしてきた親友。一言では言い表せない数々の思い出が頭をよぎり、涙が止まらなくなった。

 引退の報告をした時も同じだった。福田は柳田に電話をかけた。「アイツに電話した時、僕、泣いてしまったんですよね。『悠岐がいなかったらここまで来れなかった』『面と向かってじゃ言えないから電話にしたわ』って。本当にありがとう、っていう話をさせてもらいました」。電話口の柳田の声も震えていた。

引退会見で涙を流すくふうハヤテ・福田秀平【写真:福谷佑介】
引退会見で涙を流すくふうハヤテ・福田秀平【写真:福谷佑介】

 福田は2006年のドラフト1位で多摩大附属聖ヶ丘高から入団。広島経大出身の柳田はその4年後、2010年のドラフト2位でプロの世界に飛び込んだ。柳田の入団当初、すでに5年目の福田は1軍の戦力となっていた。「僕はずっと1軍だったので、寮でも生活時間が違うんですよね。僕はナイターで、柳田はデーゲーム。でも、僕は彼の凄さを知っていたんで、先に活躍しないと無理だって思っていました。中学の時の親友に電話して『とんでもないやつが入ってきた』っていう話もしていました」。存在を意識しつつも、仲を深めたのは、柳田が1軍に来るようになってからだった。

「1軍でやる機会が増えて、メシ行こうぜって感じで。同級生ですからね、李杜軒と山田(大樹)は。山田はピッチャーだったので、柳田と杜軒と3人で行動することが多くて、遠征先に行っても気軽にメシに行ったり、そういう仲でした。同級生が少なかったっていうのが、仲良くなれたキッカケかもしれない。杜軒とこの3人って僕は親友だと思っています。柳田は同じAB型なんで、距離感も上手い具合に調整できて、ウマがあったのかもしれませんね」

 2011年5月に柳田が初めて1軍に昇格すると、一気に仲良くなった。一緒に行動することが増え、グラウンドでも、プライベートでも、多くの時間を共にした。

 2人にとって忘れられない思い出が、2015年5月13日の敵地でのロッテ戦だ。

 中堅を守っていた柳田が、右翼の福田の目の前でフライを落球した。気落ちする柳田を気遣い、福田が食事に誘った。「もともとメシ行こうやって誘っていたんですけど、落球して、もうめちゃめちゃ落ち込んでいて『もうメシ行けんわ……』って。ホテルの自分の部屋に閉じこもってもしゃあないから、オレとメシ食って、そこで反省しようやって」。なかば強引に食事に連れ出した。柳田にとっては、その気遣いが嬉しかった。

 数え切れないほど食事に行き、酒も飲んだ。それ以上に、福田にとって柳田は特別な存在だ。「柳田がレギュラーになって、トリプルスリーとかも達成して、どんどん成長していく姿を僕は間近で見ていた。最初はやっぱり悔しいっていう思いもありましたけど、徐々に彼の人柄に惹かれていって、1人のファンとして、とにかく怪我すんなよっていう目で見ていました」。ライバルであり、友人であり、そして1人のファンでもあるという。

タマスタ筑後で再会を果たしたソフトバンク・柳田悠岐(左)と福田秀平【写真:長濱幸治】
タマスタ筑後で再会を果たしたソフトバンク・柳田悠岐(左)と福田秀平【写真:長濱幸治】

 2人は7月28日にウエスタン・リーグの試合があった筑後で久々に再会した。引退報告を終えた後で、福田の残る現役生活を惜しむかのように、2人は並んでサブ球場のフェンス沿いを歩いていた。柳田も怪我でリハビリ中。「話したのは、アイツの足の怪我の状況とかですね。反対の足を同じように怪我しているんで、焦らずしっかり治せ、とかそんな感じの話をしましたね」。その夜には食事もした。和田毅投手や中村晃外野手も駆けつけてくれたという。

「密かにいつか追い付いて、対等に話せるようように頑張りたいなって心の中で思っていましたけど、なかなかそこにはたどり着けなかったですね。彼が残り、あと何年やるかわかんない、本当に陰ながら1ファンとして、ずっと応援し続けたいなと思います。僕は1年でも長くやってほしいと思いますけど、彼の性格もあるんで。元気にプレーしてる姿を見たいなと思います」

 引退を報告すると、柳田からは労いの言葉をかけられた。「本当にお疲れさまっていうのと、お互い現役が終わったら、ゴルフでもなんでも、いろんなことをしようやって話しました」。福田にとって唯一無二の存在、柳田悠岐。その関係は現役を終えても、どれだけ年を重ねても、変わることはない。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)