3四球KOから2週間…杉山一樹の胸中は? 気持ちの“浮き沈み”、本気の「今年で辞める」覚悟

ソフトバンク・杉山一樹【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・杉山一樹【写真:荒川祐史】

15日のロッテ戦で3四球を与えて3失点…「一番自分の中でやってしまった」

 自分自身の覚悟を問われるような2週間だった。気持ちは「沈みました」と、やり返すチャンスだけを待っていた。ソフトバンクは30日、楽天戦(楽天モバイルパーク)で10-1で勝利した。3番手で登板し、試合を締めくくったのが杉山一樹投手だった。

 9点リードの9回にマウンドに上がった。先頭の小郷を155キロ直球で見逃し三線に斬ると、阿部を左飛に打ち取る。最後は辰己を153キロ直球で見逃し三振に仕留めた。チームは5連勝。試合後には優勝へのマジックナンバー「42」が点灯したが、小久保裕紀監督が「禁句です」と報道陣に言うほど、足元を見つめて戦おうとしている。

 杉山の前回登板は15日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)だった。1点リードの7回無死満塁からリリーフしたが、田村には押し出し四球を与えて同点としてしまう。藤岡は空振り三振に仕留めたが、岡と小川にも連続で押し出し四球を与えて逆転を許してしまった。チームとしても逆転負けとなった一戦。そこから「マイナビオールスターゲーム2024」も挟んで、2週間以上も登板から遠ざかっていた。本人はどんな心境だったのか。

「それはもう仕方ないですね。自分がやったことはやったことなので。後半戦、優勝するっていうチームの目標があるので。そうなったら、ああいうところであんなピッチングしてるピッチャーはなかなか使いづらいっていう単純なことなので。仕方ないですし、今もうビハインドから投げないといけないんで、なんとかビハインドでも0点でっていうのは変わらず投げたいなとは思っています」

 今だから冷静に、15日の内容を振り返ることができる。「回途中が(今季)初めてだった。いきなりランナーを背負ってということで1点勝ちで、大量得点だけは避けたいなっていうのはあったんですけど」と受け止めている。その上で「高めで失投して長打で大量失点というのは避けたかった。自分なりにそういう、やるべき選択肢を限ってしまって、窮屈の中でピッチングをしてしまったなって」と反省する。

ソフトバンク・杉山一樹【写真:竹村岳】
ソフトバンク・杉山一樹【写真:竹村岳】

 結果を残せなかったことで気持ちは「沈みました」。マウンドでのミスを取り返すには、もう1度、試合で結果を出すしかない。そのチャンスすらない時期が続いたことで「オールスター前までめっちゃ引きずってました、正直。後半戦も残り55試合だったので、自分が投げる試合も数試合ってなる。そういうミーティングもしたので」と複雑な胸中を明かす。

「自分としても今年で最後っていう気持ちでやってるので。その中で、準備とか、悔いが残らないようにいつもマウンドに立つようにしてるんで。相当(メンタルに)来ましたけど……。もしほんとに今年で辞めるってなったら、あの試合が一番自分の中でやってしまったなと」

 2月の春季キャンプ中、倉野コーチに中継ぎ起用を直訴した。大きな期待をかけられながら、今季が6年目。首脳陣に自分の思いを伝えた時から今年で辞めるという思いは変わっていない。「あそこを抑えてても多分辞めると思うんですけど、辞めさせてくれるかどうかわかんないですけど、自分の中でも辞める、辞めさせてほしいというのはずっと言っています」というのは杉山の覚悟だ。だからこそ、3四球で試合を崩してしまったロッテ戦の悔しさは、色濃く胸に刻まれている。

「もう今年中継ぎをやるっていうのを決めた時点で、良くても悪くても最後にしようって。そういう覚悟が今まで足りなかったからもう辞めようって。辞めた後は何するかわかんないですけど、そんな感じです」

 楽天戦で並べたゼロは、新たなスタートとなった。「後半戦もう1回、ゼロからやっていくつもりでいます。0点で帰ってくるっていうのをずっと、目標というか、そこはぶらさずに」。今年で辞めるという覚悟が本気だから、杉山一樹の1球1球は尊い。

(飯田航平 / Kohei Iida)