「勝てばみんな救われる」今宮健太、中村晃が感じる“変化” 心から思う「チームのため」

ソフトバンク・中村晃(左)、今宮健太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・中村晃(左)、今宮健太【写真:竹村岳】

小久保監督は就任直後に強調「チームため、なんて言葉は使わなくていい」

 4年ぶりのリーグ優勝に向け、一直線に突き進むホークス。ここぞの場面で頼りになるのは“勝利の味”を知るベテランたちだ。プロ15年目を迎えた33歳の今宮健太内野手、そして17年目の34歳、中村晃外野手。ともに開幕から1軍を離れることなく、チームの精神的支柱となっている。

 小久保裕紀監督は昨年秋の就任直後、こう口にしていた。「若手やレギュラーになっていない選手は『チームの勝利のために貢献したい』なんて言葉は使わなくていい。それを考えるのは首脳陣や主力だから」。

「チームのために」は選手がよく口にしがちなフレーズだ。その言葉が“本心”に近づきつつあると口をそろえるのが、ともに選手会長を経験した今宮であり中村晃だ。「自分のためのプレー」から「チームのためのプレー」に変化してきたのはなぜか。勝利の喜びは若手のころと感じ方が変わったのか。2人の思いに迫った。

「自分もベテランですかね? もう(年齢的には)晃さんの下ですもんね。それはもう全然違います。特に、自分が(先輩に)引っ張ってもらっていた時は、何回も優勝させてもらいましたし。そういう方がいなくなった途端に優勝できなくなっている。より一層、勝ちたいですね」

ソフトバンク・今宮健太【写真:小池義弘】
ソフトバンク・今宮健太【写真:小池義弘】

 今宮の言う「それ」は、チームのためのプレーだ。「結局、戦っているのは個人個人なんですけど、チームとして同じ目標に向けてやっていかない限りは、絶対にいい方向にいかないと思う。1人が『優勝しなくていいやろ』って思ったら、全くもって優勝できないと思いますね」。

 その言葉が本物であることは、今宮の姿に表れている。今季は練習や試合で廣瀬隆太内野手や仲田慶介内野手と二遊間を組むことも多いが、再三にわたり確認事項を口にするシーンが目立つ。

「いかに選手がゲームの中で、いい雰囲気でやっていくかが大事になると思います。若い選手にそういうところをやれというのは難しいですし、若手は目の前の1試合、1球に全力でやってくれればいい。雰囲気を作るのは僕だったり、晃さんや拓也(甲斐)がやることなので」

 今宮の言葉に同調したのが中村晃だった。「若い選手はそこまで考えなくていいのかなと思います。まずは自分が成績をしっかり残すこと。成績を残し続けることが、やっぱりこの仕事を続けていくためには必要なので」。まさにチームリーダーとしての背中を示している。

「自分だけ(のことを考えればいい)っていう感覚はなくなってきましたね。やっぱり年齢を重ねることによって勝つことがどういうことなのか、負けることがどういうことなのかも分かるようになりますし。勝てばみんな救われますし、みんなが笑顔になるので。そういう意味でも勝つということは大事だと思います」

 酸いも甘いも経験したベテランだからこそ、チームが進むべき航路に帆を合わせることができる。プレーはもちろん、何よりも貴重なのは「フォア・ザ・チームの精神」。4年ぶりの歓喜に向け、頼れる男たちがホークスをがっちりと支えている。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)