ゴミを拾いながらに語った自身の成長
大粒の汗と笑顔からは充実感が滲み出る。ソフトバンクのドラフト7位・藤田悠太郎捕手は、ルーキーイヤーの半分を終えて「(練習を)やるだけやったら、身になっていくっていうのは実感しています」と、自らの成長を口にした。
地元福岡の福岡大大濠高から入団。前半戦は主に4軍で体力面と技術面を養う日々を過ごし「高校野球では(練習を)全然やっていなかったんだなと思います」。質も量も違うプロの練習によって鍛えられた体は、見た目からもわかるほどにガッチリとしてきた。
そんな藤田悠は斉藤和巳4軍監督の、人間としての成長を大事にする指導に共感しているという。技術を磨くことも大事なことではあるが、野球人としてどうあるべきか――。斉藤監督の教えを、自身の中にスッと落とし込むことができたのは、高校時代から続ける”習慣”があるからだった。
「人としてゴミ拾いをちゃんとするとか、掃除するとか、そうやって(徳を)積むじゃないですか。やらなくてもいいんですけど、自分はやった方がいいと思うんです。高校の時は、1人でトイレ掃除をしたり、落ち葉を全部集めたりしていました」
目の前に落ちていた紙屑を拾いながら語った。「逆に気が済まないみたいな感じです。やらないと怖い、になるんですよ。悪いことをしたら、悪いことが起きるみたいな、そんな気持ちになります」。高校時代から続けているこの習慣は、今でも変わることはない。
斉藤監督からは、調子が上がらない時にこそ人間性が出ると教わっている。失敗は当たり前。ミスが起こった時にどのような態度でプレーできるのかが重要だということだ。藤田も怒りや悔しさは野球にぶつけるようにしている。
まだまだ成長期真っ只中の19歳。教えを実践することができるのは、高校時代から意識してきた“人として”の習慣があるから。「言っていることがめちゃめちゃわかります」。その胸には、プロとしての自覚も芽生え始めている。
「負けている時のベンチの雰囲気とか、そういう時こそ声を出すようにしているし、誰も声を出していない時とかにも出すようにしてます。調子がいい時って全員(声を)出せるんですよ。調子がよくない時にどれだけいい雰囲気でできるのかが大事です」
どんな状況でも、常に声を出すことを忘れずにプレーできた前半戦はあっという間に終わった。「プロに入ってきた時は外野の定位置より(打球が)飛んでいなかった」と、苦笑いしながらに振り返る飛距離も、今では首脳陣からも「伸びた」と、言われるほどに成長した。
「前半いい感じの結果で終われたので。調子が上がってきて終わったので、後半はいける気がします」。滴る汗を拭いながらに語る藤田悠の表情には、シーズン前半を駆け抜けた充実感があった。いつになっても変わらずに“習慣”を続けて欲しい。
(飯田航平 / Kohei Iida)