「お前ならもっとできるはず」…小久保監督が明かした若手への対応の真意
ソフトバンクの小久保裕紀監督が、鷹フルの単独インタビューに応じた。今回のテーマは「若手を簡単に褒めない理由」。今季は柳田悠岐外野手や牧原大成内野手ら主力が離脱しながらも、2位に大差をつけて首位に立っているホークス。積極的に起用している若手の活躍で勝利を収めた試合も多いが、指揮官が“べた褒め”するシーンはほぼない。小久保監督はその真意を明かした。
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1軍監督1年目の今季、前半戦を終えて2位ロッテに10ゲーム差をつける独走ぶりは、若手の活躍なくしてはありえなかっただろう。開幕前に支配下登録された「育成三銃士」の緒方理貢外野手、仲田慶介内野手、川村友斗外野手はもちろん、柳町達外野手、正木智也外野手、廣隆太内野手の「慶応3兄弟」、現在は2年目の吉田賢吾捕手も出場を増やすなど、存在感を示している。
若手が水を得た魚のように躍動する一方、試合後に行われる「監督囲み」での小久保監督の発言は冷静さを貫いている印象だ。7月19日の西武戦で7回無失点と好投し、今季4勝目を挙げたカーター・スチュワート・ジュニア投手に対しては「ちょっと5回が……。先発ローテの軸になるには、隙が見えたんで。やっぱり(野村)大樹に走られているようじゃダメ」と、あえての苦言を呈した。
若手野手も同様だ。6月2日の広島戦で2安打2打点と活躍した柳町に対しては「打ち続けない限りは出られないので、打ってほしいですね」とさらり。同21日のロッテ戦で昇格即スタメンとなった正木が2安打1打点と結果を出しても、「まあ、今の2軍の状態で上で勝負できんかったら、これは厳しいので。危機感もってやっていると思いますよ」と褒めることはなかった。
もちろん期待がゆえの言葉であることは間違いない。それでも、受け取り方によっては冷たくも感じられる指揮官の対応。若手への“塩対応”ぶりについて、小久保監督はゆっくりと口を開いた。
「褒めて育てるって、よく世間は言うんですけど。褒めたらその人の“当たり前の基準”が低くなるじゃないですか。人の成長を止めていると思うんですよね。だって、『これでよかったんだ』と思ったら、余り成長しないでしょ。だから簡単に褒めるのはよくないよなと思っていますよ」
昨季まで2軍監督を2年間務ていた小久保監督が1つ、決めていることがある。「2軍(監督)の時は批判をあえてしていたので。『このままじゃ無理』と思ったら、そのままメディアを通して(言う)。どうせ選手は見るやろと思って言っていましたけど、1軍の場合は勝つための集団なので。名指しで個人批判はほぼしないと決めてますね」。
小久保監督が考える成長を促す言葉とは何か。「選手の成長を考えているのであれば、『お前ならもっとできるはずと思っているから』と言う方が、そこ(上のレベル)まで伸びると思っているので」。それこそが、簡単に褒めないことの真意だ。
もちろん、絶対に褒めないわけではない。「選手としてこれくらいできるだろうという評価を大幅に上回った時には褒めますよ、当然。ただ、もっと高いレベルを要求している選手が、求めているものと同じことをしても、褒めない。そこはぶれないようにやっています」。
小久保監督の「褒めない」は、決してパフォーマンスに満足していないわけではなく、できて当然という見方だ。それは選手への信頼の表れでもある。毎試合後の指揮官の発言に、より注目してもらいたい。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)