柳町が7月に入って2本目のアーチ…「ちょっと自分自身もびっくりしてはいる」
手ごたえの詰まった完璧な一振りだった。20日の西武戦(ベルーナドーム)。3点を追う2回1死一、二塁で打席に入った柳町達外野手が今井の153キロ直球を捉えた打球は、右翼スタンドに吸い込まれた。同点の2号3ランに驚いた表情を浮かべつつ、力強くこぶしを握った。
試合には敗れたものの、取材対応した小久保裕紀監督の表情が27歳の成長を雄弁に語っていた。「ストライクを取りにくる強い真っすぐをあの姿で打てるとね。やってきたことが結果に繋がって、自信に繋がるんじゃないですかね。今までだったら絶対にファウルですからね」。
今季ここまで打率.324と、5月下旬の1軍昇格から好調をキープしているが、何より目に付くのが長打の増加だ。昨季までの4年間でわずか1本だった本塁打が、今季は早くも2本目をマーク。長打率も入団2年目の2021年に記録した「.354」が最高だったのに対し、今季は「.461」を記録している。堅実な打撃が持ち味だった柳町に何が起きたのか。
「(スイングは)特には変えていないです。(ボールを捉える)ポイントがきょうみたいに前で捉えられれば、自然と打球が上がってくれるのかなと思います」。本人は事もなげに振り返った。一方で、数字は如実に柳町の変化を表している。
セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータによると、ストレートに対する得点貢献を示す指標「wFA」は「13.1」をマーク。入団した2020年から昨季までを順に振り返ると-0.7、1.2、-2.4、-1.3。真っ直ぐへの対応が大幅に改善されていることが分かる。
これまでは変化球への柔軟な対応が強みだった一方で、力強い直球には手を焼いていた柳町だが、今季初本塁打を放った12日の日本ハム戦(エスコンフィールド)では、田中正の152キロ直球を逆方向の左中間席に放り込んだ。20日の今井とともに、リーグ屈指の速球派から結果を出したことは、対戦相手の印象を変えるという点でも大きな意味がある。
過去2シーズンは1軍で本塁打がなく、柳町にとっても長打力アップは喫緊の課題だった。昨オフは肉体面、技術面ともに見直しを図ったことが、ここにきて実を結びつつある。小久保監督も「外野手なんで。多少は長打力がないとこの世界ではやっていけない」と指摘しながらも、「いいホームランですね」と目を細めた。
柳町自身も「やっぱり2年連続で(本塁打が)ゼロだったんで。それがいきなり出て、ちょっと自分自身もびっくりしてはいるんですけど。今後どんどん積み重ねていければなと思います」と驚きつつ、「しっかりストレートを捉えられているのはいいことかなと思います」と手ごたえをつかんでいる様子だった。
「僕自身はしっかり振りに行った結果、捉えられてホームランという感じなんで、別にそんなに(本塁打の)意識はしないですね」。自然体で臨みながらも生まれた本塁打は、柳町が一つ上のステージに進んでいる証でもある。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)