周東佑京が語る「責任」…背中に死球も「甘えてはいけない」 途中交代を即答で否定した理由

死球を受けうずくまるソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】
死球を受けうずくまるソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】

6月28日の日本ハム戦で死球を受けた今宮健太…復帰戦で明かした状態と胸中

 自分自身もレギュラーへの道を歩んでいるところだから、絶対にチャンスは手放したくなかった。「甘えてはいけないです」。ソフトバンクは2日、西武戦(東京ドーム)に3-2で勝利した。ショッキングなシーンだったのが、3回だ。周東佑京内野手が、背中に死球を受けた。かすめていくようなものではなく、ボールはしっかりと直撃した。ファンやナインから見ても心配に思えるシーンだったが、明かしたのはスタメンで出るという責任感だった。3試合ぶりに復帰した今宮健太内野手とともに、2人の心境に迫る。

 西武・先発は羽田慎之介投手。八王子学園八王子高からドラフト4位で入団した3年目の左腕だ。立ち上がりからボールは散らばっており、捕手の頭上を越えてバックネットに向かっていく投球もあった。試合後に小久保裕紀監督も「荒れ球の投手で怪我人がちょっと怖かったんですけど」と振り返った中、周東が打席に立ったのは3回無死一塁だった。

 1ボールからの2球目、直球が背中に直撃した。羽田も帽子を取って頭を下げる。周東は打席を飛び出してしゃがみ込み、球団のトレーナーもすぐさま駆け寄ってきた。3打数1安打でフル出場し、中堅守備もそつなくこなしていた。試合後も「全然大丈夫です、痛いけど」と語る。途中交代の選択肢はなかったのか、と問われると力強く即答した。

「(途中交代は)ないでしょう。そんなに試合中は痛くなかったですし。当たったのも筋肉だったので」

 奈良原浩ヘッドコーチも「背中だったけど、一応本人は『大丈夫』と言っていました」とやり取りを明かす。周東も「代わるのか、代わらないのかは監督とコーチが決めることですから」と、グラウンドに立つからには全力でプレーを続けた。昨シーズンまでも、代走としての役割を期待される一方で、自分自身はレギュラーを目指してきた。だからこそ、1度スタメンを託されたからには、自分からは絶対にグラウンドを去りたくない。

「出られるうちは出ておかないと。筋肉でしたし、出たくても出られない時期もありましたから。出させてもらっているならそれに応えたいなっていうのはあります」

 5月下旬から打撃の調子が下降線を描き、6月上旬にはスタメンを外れた。ベンチにいる悔しさをもう味わいたくないから、グラウンドへの思いも「強くなります」と認める。「出ている人の責任かなと思います。最後まで出るっていうのは。途中からっていうのはそんなに信頼されていないじゃないですけど。最後まで出してもらっているということ、スタメンで出るということはそういう(当たり前の)ことです。甘えてはいけないです」と言い切る口調が頼もしかった。

 死球が影響で欠場し、復帰戦となったのは今宮健太内野手だ。6月28日の日本ハム戦(エスコンフィールド)。9回の打席で生田目翼投手の150キロが背中に直撃した。絶叫し、バットを放り投げてしまうほどの痛み。代走に川瀬晃内野手を送られ、その後の2試合は出場がなかった。

 この日は3回無死一、二塁の場面で打席へ。1球で犠打を決めて、先制点を演出した。「チャンスが四死球で来たので絶対に点が欲しいと思っていました。ある程度、投手の前に転がせば大丈夫と思っていたので自信を持ってやりました」と振り返る。周東の死球の直後だったが「左(羽田)、右(生田目)という違いはあったので、そこまで気にしていなかったですし、思ったほどは荒れていなかったです。一発で決められてよかったです」と目の前の1球に集中していた。

 今宮は死球を受けた日本ハム戦、ベンチに戻りながら伏見寅威捕手の胸をポンポンと触るシーンがあった。「たまたまいただけで、特に関係はないですよ」とだけ話したが、今宮の人柄が表れた一瞬だった。この日についても「大丈夫だから出ています」と繰り返した。周東も試合後、背中をアイシングしているような様子は確認できなかった。72試合を終えた2024年シーズン、それぞれが怪我なく、納得のいく状態で戦っていてほしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)