「ホームラン打ってきます」 周東佑京の“予言”…誰よりも山川穂高が驚いていた理由

ソフトバンク・山川穂高と周東佑京(左)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・山川穂高と周東佑京(左)【写真:竹村岳】

好投していた種市から決勝弾「ホームランは考えていなかったです」

 ただの“予言”ではあったが、実現したから誰よりも驚いた。ソフトバンクは22日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)に3-1で逆転勝利した。決勝点となったのが、周東佑京内野手の2号ソロだった。打席に入る直前、山川穂高内野手との会話に“伏線”があった。

 相手先発は種市。ホークス打線は7回を終えて、1得点に抑え込まれていた。8回2死、周東が打席に立つ。1ボールからの2球目を振り抜くと、打球は右中間テラスに着弾した。周東自身は3打数無安打で迎えた4打席目。「球数も増えていましたし、打てる球をしっかり打とうと思っていました」と、もう1度足元を見つめて打席に向かった。「ホームランは考えていなかったです。長打が出たらいいな、っていうくらいでした」と振り返るが、最高の結果を残してみせた。

 ダイヤモンドを一周して、ベンチに戻ってくる。ハイタッチを終えようとした時に、背中を叩かれて、力強く指をさしてきたのが山川だった。試合後に山川は「本人に聞いてください」と笑っていた。一夜が明けたこの日、周東は「何言ってたか忘れちゃったんですよね」と言いながらも、自分自身の“予言”を明かした。

「『ホームラン打ってきます』とは言った気がするします。ただそれを言っただけで、山川さんが驚いてた感じですね」

 山川も「そうですね、言っていました」と認める。リーグトップの12本塁打、通算230発のスラッガーも“予告ホームラン”に「実際に言って打ったんですから、それはすごいですよね」と手を叩いた。試合終盤の2死走者なし。他愛もない会話ではあったが、山川をも驚かせる値千金のアーチだった。

 周東は日頃から中村晃外野手や近藤健介外野手から、打撃面の助言をもらっている。山川に話を聞くことも「結構ありますよ」といい「色んな人に聞いて、知識を増やす感じですね」と頷く。周東と山川、打者としてのタイプは全く違うように思えるが「色んな話をされますね。バッティング練習の中でもこう合わせた方がいい、とか。(その中で自分が大事にしているのは)しっかり投手に合わせて、タイミングを取ることじゃないですか」。山川とのコミュニケーションが、結果にも繋がったホームランだった。

 山川は取材に応じた際や、後輩に助言を送る時。「自分自身が言語化できないといけないですから」と、相手が理解しやすいような伝え方を心掛けている。周東も「理論的だなって思いますね」と、山川の言葉はスッと入ってくるようだ。俊足巧打というスタイルだけに、他の選手のホームランをベンチで見届けることがほとんど。山川を含め、ナインが笑顔で出迎えてくれたことには「気持ちよかったですね」とはにかんだ。

 リーグ戦が再開して、初戦となったのは21日のロッテ戦(北九州)。5月15日の楽天戦(楽天モバイルパーク)以来の猛打賞を記録した。6月は、月間打率.295で「交流戦の終盤から、感覚的にはすごくよかった。練習日の時もいい感じで打てていたと思うので、それを引き続き、できるように。それが昨日(21日)の3本に繋がりました」と、上昇気流は自分でも感じ取っている。その要因は、好調を維持していたシーズン序盤に立ち返ったからだ。

「意識の問題ですね。どっちの方向に打ちに行くのか。序盤のいい時に戻ったという感じです。それまでは難しい球に手を出そうとしていた。ヒットが出ていなかったので、打ちたい気持ちが強すぎて、色んな球に手を出していた。打てない球は打てないですし、打てる球をしっかり打とうという意識です」

 貯金24という独走態勢に入り、チームの一員である周東も「すごいなと思います」と語る。その上で「こういう時に余裕をこいているとやられると思います。勝てる時にしっかり勝つ。目の前の試合を頑張るのは、ゲーム差が開いても詰まっても同じです」と足元を見つめた。放つ言葉の1つをも大切にして、6月の戦いを突き進んでいく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)