手痛い“誤算”も…小久保ホークスが強い理由 井口資仁氏が分析、浸透する「無形の力」

ソフトバンク・小久保裕紀監督(中央)【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・小久保裕紀監督(中央)【写真:荒川祐史】

井口資仁氏「去年がなんで勝てなかったんだろう、というくらいの戦力」

 ダイエー(現ソフトバンク)やメジャーで活躍し、ロッテの監督も務めた野球解説者の井口資仁氏によるホークス分析(不定期掲載)。4回目のテーマは「ソフトバンクの強さ」。ホークスに8年間所属し、現役時代には小久保裕紀監督ともプレーした井口氏だからこそ実感するソフトバンクの強さを語った。

 4年ぶりのリーグ制覇を狙うチームは、交流戦を終えて41勝19敗2分けの貯金22で、2位ロッテに9ゲーム差と首位を独走している。昨年はAクラスとはいえ、優勝したオリックスに15.5ゲームという圧倒的な差をつけられての3位に終わった。

「去年がなんで勝てなかったんだろう、というくらいの戦力でした。本塁打王、打点王(ともに近藤健介)がいて、そこに柳田(悠岐外野手)がいて、中村晃(外野手)や今宮(健太内野手)というベテランがいて……戦力的には群を抜いていました。今年もそうです。キャンプから見ていて、今年はなぜ強いかというと戦力が揃っているからですよね。補強も含めて」

 12球団屈指の戦力が整っているだけに「怪我人を出さずに1年をどうやって回すかというのが小久保監督の考えだった」。ところが、現在は中心選手の柳田をはじめ、牧原大成内野手や三森大貴内野手も怪我で離脱。「今はちょっと痛いでしょうね」と語る。

 それでも今は柳町達外野手や佐藤直樹外野手らが主力の穴を埋めるべく奮闘中。どんなメンバーでも高いレベルの野球を維持できているのは「選手みんなに役割が決まっている」からだという。「この選手なら塁にでたら走るとか、そういう役割分担が明確に選手に浸透している」と分析した。

井口資仁氏(右)【写真:竹村岳】
井口資仁氏(右)【写真:竹村岳】

小久保監督のリーダーシップ「真面目で、王イズムを継承」

 各選手の役割に対する認識力は「もちろん高いです」と即答する。「勝ってきたチームなので、そういう伝統が染み付いていますよね。弱いチームだと、1回勝ってもそういうのはなかなかできないですけど、勝ち続けるチームは伝統として残っている。そのあたりが全然違う」と自身もホークスで受け継ぎ、実践してきた“背景”を力説した。

 また、チームの先頭に立つ小久保監督の存在も大きいという。「真面目で、王イズムを継承して勝ちにこだわるし、妥協は許さない。現役のときから練習量もすごかったですし、そういった意味では厳しいと思います。選手のときからリーダーでしたし、監督になってもチームを引っ張る姿は変わっていないんじゃないですかね。言葉に説得力はあると思いますよ」。

 小久保監督をはじめ、歴戦の強者たちが歩んできた“鷹の道”。勝利に徹する王イズムは時を超えて引き継がれ、ベテラン、主力、若手へと浸透している。「ホークスはここ数年は世代交代の時とも言われている。それが、怪我人が出たことによって、いい形になって出ていると思います」。いつの時代でも、どんな状況でもブレることない戦う姿勢が「常勝ホークス」の強さの原点だ。

(湯浅大 / Dai Yuasa)