2度の指名漏れ経験した“最高の仲間” 仲田慶介が再会…交わした会話「どっちも実力不足」

ソフトバンク・仲田慶介【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・仲田慶介【写真:荒川祐史】

6月7日の交流戦で仲田は福岡大時代の同級生の井上と再会を果たした

 夢の舞台での感慨深い再会だった。6月7日から横浜スタジアムで行われたDeNAとの交流戦。仲田慶介内野手は久しぶりに福岡大の同級生でもあるDeNAの井上絢登内野手と顔を合わせた。最大のライバルかつ最高の仲間。「大学の時からずっと一緒にプロを目指してやってきたので、それが1軍で再会できて嬉しいです」。ともに1軍の選手として果たした再会を、仲田は感慨深そうに振り返った。

 時は2021年10月に遡る。この年のドラフト会議。仲田と井上はプロ志望届を提出し、運命の日を迎えた。だが、会議がスタートして3時間が経っても、ともに名前は呼ばれなかった。最後の最後に名前を呼ばれたのは仲田だった。ソフトバンクが育成14巡目で指名。その直後に「選択終了」のアナウンスが流れた。128人中128番目で指名された仲田は安堵の涙を流した一方で、井上は指名漏れとなった。

 仲田と井上は福岡大の外野手として1年生の頃からずっと一緒に練習してきた。グラウンドを離れてもトレーニングに励むなど、切磋琢磨した仲間だった。「井上には1番感謝している。来年一緒にプロになりたいからお互いに頑張ろう」。仲田はドラフトの後、井上へ思いをこう伝えた。いつか、NPBの1軍の舞台での再会を――。仲田は育成から支配下を、井上は四国ILの徳島からNPBを目指し、それぞれのステージへと進んだ。

 翌2022年のドラフト。四国ILで本塁打と打点の2冠に輝いた井上だったが、この年も名前が呼ばれることはなかった。2度目の指名漏れ。それでも、NPBの夢は諦められなかった。井上は“最後”と覚悟を決めて徳島での2年目を戦い、2年連続で2冠王に輝いた。2度の指名漏れを経て迎えた2023年のドラフトで、ついにDeNAから6位で指名された。念願のプロ入りは、支配下での指名だった。

 プロ入りは仲田が先だったが、支配下登録されたのは井上が先。井上を追いかけるように、仲田はシーズン開幕前に支配下昇格の切符を掴み、2人ともに支配下登録選手として2024年シーズンの開幕を迎えた。仲田は開幕から1軍の戦力となり、2軍でアピールした井上も4月12日のヤクルト戦で1軍初昇格。一度、登録抹消となったものの、ソフトバンクとの交流戦が始まる6月7日に再昇格を果たした。

 この日の朝、井上はまだ2軍にいた。横須賀スタジアムで行われていたイースタン・リーグの新潟戦に「5番・三塁」でスタメン出場。5回に先制適時打を放つと、そのまま代走を送られて途中交代した。DeNAの1軍で怪我人が続出していたため、2軍戦の途中で井上の1軍昇格が決まったという。急遽、横須賀から横浜の1軍に向かうことになった道中で、仲田は井上から連絡を受けたという。

 偶然が重ねって果たした1軍での再会を仲田は「やっとじゃないですか」と噛み締めていた。「絢登も指名漏れから、独立リーグでめっちゃ苦労して、支配下でプロに入ったので。僕も育成で入って3年目に支配下なって、その年に1軍で会えて、感慨深いですね」としみじみ。「まだまだ、どっちも実力不足だなって話して『もっと頑張ろう』みたいな話をしました」と、2人の間で交わされた会話も明かしてくれた。

 仲田は井上を「めちゃくちゃライバルなんで、負けたくないって存在ではあります。でも、すごく刺激をもらう存在です」と表現する。再会を果たした7日の試合、仲田は「8番・二塁」でスタメン出場してノーヒット。井上は代打として途中出場して二塁打を放ち、そのまま右翼と三塁を守り、翌日と翌々日はスタメンで出場した。

「(井上の)サードの守備がすごく上手かった。あんまり内野のプレーは見たことなかったので、負けられないなって、自分ももっと頑張らないといけないと思いました。自分は打てなかったんで……。普通に技術不足という感じなので、しっかりコンスタントに結果を残せるようにもっと技術つけないといけないなと」

 井上も仲田も大学時代は外野手だった。井上が本格的に内野手に挑戦したのは徳島に入団してから。プロの舞台で好プレーを見せた井上に仲田も大いに刺激を受けた。開幕から1軍にいても危機感は常にある。「自分がやるべきことをやって結果を残すしかない。しっかり準備だけして、残れるように」。最高のライバルとの再会が、仲田の気持ちをさらに強く奮い立たせた。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)