今宮健太は「究極の形」…“引っ張られて”上達した守備 廣瀨隆太がかけられた「合わすぞ」の声

二遊間を組むソフトバンク・今宮健太(左)と廣瀨隆太【写真:竹村岳】
二遊間を組むソフトバンク・今宮健太(左)と廣瀨隆太【写真:竹村岳】

17試合に出場し無失策の廣瀨…今宮と二遊間を組むことで生まれる相乗効果

 1軍のスピードに食らいつきながら成長を続ける。開幕から二塁を守っていた牧原大成内野手が、「右内腹斜筋損傷」によって離脱。空いた穴を必死に埋めようとしていた三森大貴内野手も「右示指末節骨骨折」と診断された中で、スタメン出場を続けるのが廣瀨隆太内野手だ。身に起こる全てが初めての1軍生活で、今宮健太内野手と二遊間を組んでいる。名手とのコンビで得ているものは、どんなものなのか。今宮が頼もしく、後輩を引っ張ってくれている。「俺と合わすぞ」――。

 5月28日に「7番・二塁」で、プロ入り初のスタメン出場を果たすと、交流戦終了時点まで17試合に出場した。2軍にいる時には守備を一番の課題として捉え、松山秀明2軍監督も「まだ“美”というよりは“ブ”ですけどね(笑)。でも少しずつ上達はしていますし、スター性のある選手だと思いますから」とその成長を見守ってきた。1軍でも無失策を継続。守備からリズムを作ろうと、懸命にプレーを続けている。

「だいぶ上手くなったと思います」と本人も自信をのぞかせるまでに上達した守備。その背景には、2013年から2017年にかけて、5年連続でゴールデン・グラブ賞を受賞している今宮健太内野手の存在があった。本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチはこう語る。

「一番助かるのが、今宮が機転を利かせて、廣瀨に声をかけてくれたり『俺と合わすぞ』っていう風に言ってくれている。今宮の存在はこちらとしても助かります。一番の要でもあるショートを守るだけあって、彼の存在とチームの声かけとしては助かりますね」

 本多コーチ自身も現役時代は川崎宗則さんと二遊間を組み、2011年と2012年にゴールデン・グラブ賞を獲得した。「二遊間はコンビネーションが一番大事。練習の時からタイミングを合わせたり、感じ合うことが大切」。球界トップクラスの技術を持っていた川崎さんの技術に引っ張られるように腕が磨かれたことを思い返す。廣瀨はまさに今、プロのレベルを肌で感じているからこそ、今宮と二遊間を組んでいることが相乗効果となっていると、本多コーチも解説する。

「プロに入って1軍と2軍のスピードはもちろん違いますし。あとは1軍の選手ってすごくいやらしい選手が多くて。いやらしいっていうか、思ってもないところでセーフティーとか、思ってもないとこで走ってきたりとか。予期せぬことが起こるのが1軍。そういう1軍の環境で経験できているので、全てが彼のためになってるんだなと思います」

 1軍は試合がメインとなるだけに、出場を続けながら技術の指導をするには時間が足りない。それ以上に、1軍の環境の中で廣瀨自身が肌で何かを感じることが成長に繋がるという。廣瀨自身も「はじめは今宮さんと二遊間を組むイメージができていなかったんです。だけど、今は組むことができてすごく楽しいですし、ありがたいことだと思います」と語る。言葉で教わるだけではなく、プレーや姿から感じるものは多い。

 二塁から見る今宮のプレーは「スピード感がある中で、正確っていうのは究極の形だと思います」と廣瀨の目に映る。併殺を取る時のトスのスピード、打球に対して一直線で入っていく足の運び、これまでに体感したことがなかったレベルを今、味わっているところだ。廣瀨自身もその域を目指さなければならないと思えたことが、守備の上達につながっている。

 最初はベースカバーに遅れそうになることもあった。「トスするのもめっちゃ速いので、早めに準備しています」。それでも今宮が廣瀨に合わせるのではなく、自分から背伸びをするように今宮に合わせることで、1軍のスピードにも少しづつ慣れてきた。主力が相次いで離脱する中、若鷹の成長速度が増している。

(飯田航平 / Kohei Iida)