長期離脱も「柳田の代わりはいない」 和田毅が語る魅力…ファンと選手を「惹きつけるもの」

ソフトバンク・和田毅【写真:竹村岳】
ソフトバンク・和田毅【写真:竹村岳】

「ご飯屋さんで会ってそのまま一緒に食べたりしたこともあります、遠征先で」

 ギータにしかない魅力がある。長年、チームメートとして勝利を追い求めてきたから、誰よりも知っている1人だ。「それはチームにとっては大きなことですよ」と語るのが、チーム最年長の和田毅投手。柳田悠岐外野手が登録抹消されたのは6月1日。和田も「チームの柱ですし。バッティングや守備だけではなくて、彼がいるだけで違うチームになりますから」と、離脱の影響を感じ取っている。

 5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)で内野ゴロを放った際に右足を痛めた。なんとか一塁まで走ったものの、症状は軽くはなかった。6月1日に佐賀市内の病院で受診すると、診断は「右半腱様筋損傷」。全治はおよそ4か月で、残ったシーズンのほとんどを柳田抜きで戦うことになった。

 2003年からプロの世界に飛び込み、今季でプロ22年目を迎えた。柳田が入団したのは2011年で、和田はこの年のオフに海外FA権を行使した。復帰した2016年には、柳田は前年にトリプルスリーを達成するなどホークスの顔になっていた。投手と野手で接点は少なくとも、自分なりにギータにしかない魅力を知っているから、離脱の意味はヒシヒシと感じていた。

【鍵かけ】

「柳田という選手、人間っていうのは、投手や野手、裏方さんとか関係のないイメージがある。彼は誰に対しても、そういう裏表が全くない人だし。投手だろうと野手だろうと裏方さんだろうとスタッフだろうと、みんな同じ目線で話している。投手だから話さないとか、彼は全くないと思いますよ。そういう人って、人が集まってきますよね」

 春季キャンプ中、後輩と同室になれば一緒にテレビゲームをする。お世話になった裏方さんには、オフに心からの感謝を伝える。和田も「本当に全く、その通りだと思います」と、柳田の周りに自然と輪ができるところを何度も見てきた。「僕もしゃべりますよ。ご飯屋さんでばったり会ってそのまま一緒に食べたりしたこともありますしね、遠征先で」。王貞治会長や松坂大輔さん、人を引き寄せるものを持っている人と、これまで接してきた和田も「比較はできないですけど」とした上で、柳田にしかない魅力があると明言する。

「その人の周りに輪ができる。それか、すごすぎて近寄れないか、どっちかですよね。他の人との比較はできないですけど、柳田には柳田の魅力があると思うし。彼だからこそ、選手もそうですけど、ファンの皆さんを惹きつけるものもあると思います。またいいところで打ってくれますしね。それは何かを持っているというよりは、彼の努力だと思います。彼の人柄、徳を積んできたというか。(人が集まるのも)僕は不思議じゃないですよ」

ソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】
ソフトバンク・柳田悠岐【写真:竹村岳】

 2018年、和田は左肩を痛めて1軍登板なしに終わる。リハビリに専念して、チームの力になれなかった歯痒さは和田も経験した。だからこそ「そこは割り切ってやるしかない。彼も当然、やってしまって悔しいでしょうし。戦えないっていうのは相当でしょうけど、割り切ってリハビリに専念してると思います」と気持ちを察する。「やってしまったことを悔いるよりも、次どうするべきかっていうのをしっかりとやっているんじゃないですかね」。プロ野球選手であるならば、どんな状況だろうと前を向くしかない。

 柳田が登録抹消となった6月1日、小久保裕紀監督は試合前に選手を集め「開幕の時に話した“プロフェッショナル”の話をしました。柳田の穴を埋めようというのは考えなくていいという話で、個々がプロフェッショナル、替えの利かない選手になりなさい」と訓示した。その場には当然、和田もいた。指揮官の言葉に「一丸になるしかない」と背筋を伸ばし、残りのシーズンを見据える。

「柳田の代わりなんていないですから。監督の言った通り、柳田の穴を埋めるんじゃなくて1人1人が替えの利かない選手になること。それがプロフェッショナルだと思うし、その集まりで、勝っていくしかない。本当に監督がおっしゃった通り。あそこでビシッとチームが引き締まったと思いましたし。引きずることなく、そこから柳田悠岐が戻ってきた時にいい位置にいられるように。みんな言っていますけどね、僕もその通りだと思います」

 何度だって助けてもらった。今は自分たちが柳田を待ち、救う番だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)