4回2死満塁から高卒1年目の鈴木に2点打…小久保監督が「気になった」ポイント
まさに「あの時と一緒」だった。だから、伝えたかった。ソフトバンクは12日、ヤクルト戦(みずほPayPayドーム)に3-9で敗戦した。先発の大津亮介投手は5回7失点で3敗目を喫した。試合後、小久保裕紀監督は語気を強めて「そういう気持ちが、バッテリーが持っていたのかはすごく気になりました」というポイントがあった。2軍監督時代から、闘争心を大切にする姿勢は何も変わっていない。
3回に打線が1点を先制したが、4回に同点に追いつかれる。なお2死二、三塁で山田を迎えると、ベンチは満塁を選択して申告敬遠をした。打席には、高卒1年目のルーキー、鈴木だ。得意のチェンジアップを駆使して追い込んだものの、そのプロセスで直球は使わず。最後はスライダーを弾き返されて、勝ち越しの2点打となった。
鈴木の第1打席は空振り三振。プロ2打席目の18歳に対して、正面から向かっていく気持ちがあったのか。小久保監督が厳しく言及したのはそこだ。「あそこで10年目の選手(を相手にした)の配球というか、打てるものなら打ってみろという気持ちがバッテリーにあったのかどうかはすごく大事、この世界で。そんな甘いものではなくて、あそこで逃げとは思わないですけど、プロの先輩としてそういう気持ちが、バッテリーが持っていたのか」と語る。厳しく言及したのは、2軍監督時代から指揮官自身が何も変わっていない証拠でもあった。
2023年9月2日、ウエスタン・リーグの広島戦(タマスタ筑後)。2点をリードした9回にマウンドに上がったのは古川侑利投手だった。ピンチを作ると、当時高卒1年目だった清水(叶人)を打席に迎えた。左中間へのタイムリーで、結果的にチームは逆転負けを喫した。マスクを被っていたのが、この日と同じ海野だった。
当時も指揮官は「『プロに入ってまだ6か月とか7か月の選手に打たれるわけない』と思って投げたらいいんですけど。そういうのが古川には見られなかったなって思います」と話していた。だから、この日も大津の姿を見逃すことはできなかった。
「そうそう、あの時と一緒。打たれた古川を監督室に呼んで、話をしたあの時と一緒」
その瞬間を知っている仲田慶介内野手も「覚えています。同じようなことをベンチでも言っていましたし、僕も監督の隣に座ることが多かったので」と振り返る。ホームでもビジターでも関係なくあった試合後のミーティングでも、同様の思いを選手たちに伝えた。勝敗が全ての1軍戦なら、思いもより強くなる。苦言を呈したのも、ユニホームを脱ぐ瞬間まで忘れてはいけない闘争心を、バッテリーに伝えたかったからだ。
倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も同調する。「打たれ出してから強い気持ちが見られなかったことは残念でした。結果が悪くて言うわけじゃなくて、僕はマウンドの姿だと思う。そこにエネルギー、戦う姿勢を感じられなかった。この姿ではマウンドには上がれないという話はしました」と明かす。具体的な要因についても「心の隙じゃないですか? これまで上手く行っていたし、大津にとってはこれも初めての経験ですから」と、それぞれにとって気持ちを引き締める大きな出来事になった。
倉野コーチは「次回の大津の姿に期待します」と、話すにとどめた。小久保監督は「海野もしかりです。海野がそれを引き出したかどうか。真っすぐは0球だったでしょ」と強調した。悔しさをバネにして、1人1人が強くなるしかない。
(竹村岳 / Gaku Takemura)