なぜ川村友斗が登録抹消? 首脳陣が語った明確な課題…見失いつつあった自分の“強み”

ソフトバンク・川村友斗【写真:竹村岳】
ソフトバンク・川村友斗【写真:竹村岳】

笹川吉康が昇格した一方で登録抹消となった川村友斗…首脳陣が明かした理由

 明確な課題がわかった。もう1度、磨き直してもらうために、2軍に行かせた。ソフトバンクは11日、笹川吉康外野手を出場選手登録した。奈良原浩ヘッドコーチは「彼の成長を映像で見た中で彼を1回、1軍で、と。そういう期待値です」と語る。一方で10日に登録抹消となったのが、川村友斗外野手だった。開幕からチームを支えていた川村が、なぜこのタイミングで抹消となったのか。奈良原コーチと、村上隆行打撃コーチが理由を明かした。

 笹川は2020年ドラフト2位で横浜商業高から入団した4年目の22歳。今季はウエスタン・リーグで55試合に出場して打率.271、2本塁打、20打点の成績を残していた。奈良原コーチも「(小久保)監督は監督で、期待していると思いますよ。去年、一昨年から見ている中で、彼にも期待値がある。チャンスはあると思います」と言う。11日のヤクルト戦(みずほPayPayドーム)でも、代打としての準備を重ねて、出番を待っていた。

 川村は2021年育成ドラフト2位で仙台大から入団した。今年の2月はキャンプインからA組に名を連ね、3月19日に支配下登録された。39試合に出場して打率.282、6打点、3盗塁。スタメン出場だけではなく、途中出場でも1枚のカードとして、1軍の戦力を支えていた。笹川を昇格させた中で当然、誰かを上げるなら誰かを落とさなければならない。なぜ川村が選ばれたのか、奈良原コーチが明言した。

「ちょっと、攻められ方。出れば出るほど、データが集まってしまうので、どうしても打てないところを集中的に投げられてしまう。プロなら当たり前な話なんですけど。打てないボールを投げられる、結果として打てていない、それに対してどうするか、というところです」

 川村が最後にスタメン出場したのは5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)で、4打数1安打、3三振。直近の20打席では3安打、3四球、7三振と少しずつ偏りが表れ始めていた。「そこが打てないと思われたら、攻められる。結果的に打てたはずの球種も打てなくなってきているというところの修正です」と奈良原コーチも続ける。1軍クラスの投手なら、苦手なコースを突き続けてくる。その壁を乗り越えてもらいたかった。

 1軍では近藤健介外野手や山川穂高内野手ら、不動のレギュラーがいる。柳田悠岐外野手が離脱した穴も、柳町達外野手が打率.419で必死に埋めようとしている。小久保監督も、不動の選手がいるのなら、ベンチスタートの選手には代走や守備固めなど、チーム事情にフィットする役割を求めてきた。奈良原コーチも「それもある」と認め「川村も頭から使えないと打席数が少なくなる。攻められ方がわかってきて、それで打てた球が打てなくなってくる。じゃあもう1回、形を作るしかないですよね」と、具体的な理由を説明した。

 バッティングについて日々、川村とコミュニケーションを取ってきた村上コーチも「変化球で攻められたら打てなかった。あいつは真っすぐに強いのに、真っすぐも打てなくなってきた」と同調する。課題についても「真っすぐを打つタイミングの中で、変化球にどう対応するのか。そこだけです」とキッパリだ。小久保監督も認める外野の守備力と走力。スタメンで出るだけの力があるから、村上コーチも全てが必要なんだと頷いた。

「あとはバントとかエンドランとか、常時(スタメンで)出るなら、そういうところもやっていかないといけない。リフレッシュという意味でも、テーマを持たせて行かせました。今は(2軍での)2、3試合は“真っすぐ1本”という形から、サインプレーを入れていって、どう変化球に対応するかなので。あいつがどう変わってくるか、ですね」

 リストを生かした力強さが最大の持ち味。日々の練習の中でも「対応できるだけの形は、ティー打撃からやらせて修正していました。『そのまま行け』ということで送り出しました」と打撃面の“宿題”を与えたことも明言する。「人とは違うリストの強さがある中で、上手く打とうとしていた。真っすぐを打てるのに打ち損じていたのは、変化球を待ち始めたから。もう1回原点に戻れ、ということです」。見失いつつあった自分の強みを見つけてもらうために、時間を与える決断を首脳陣はくだした。

 川村はすぐに2軍に合流。新潟遠征にも帯同して、11日はオイシックス戦(三条)に「2番・中堅」で先発。4打数3安打の活躍を見せていた。村上コーチの「失敗したことは財産です。それでどう取り組むかが大事。テーマを持ってしっかりと取り組んで、成長して戻ってきてくれたら」という言葉に、川村友斗への期待が込められていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)