「あそこを読めた」 同点&V打を呼んだ今宮の“周りを見る目”…柳田不在で際立った存在感

ソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】
ソフトバンク・今宮健太【写真:竹村岳】

7回1死一塁から一塁線にセーフティバント…なかなか見ないヘッスラの理由

 大黒柱が抜けても、変わらない思いで戦っている。ソフトバンクは4日の中日戦(バンテリンドーム)に3-2で逆転勝利した。小久保裕紀監督は「そこに尽きる」と、2点にしのいだ投手陣に目を細める。打線も、追いかける形になった中で、強力な中日リリーフ陣から2点を奪った。起点となったのが、今宮健太内野手だ。

 1点を追いかける展開で、7回に突入した。マウンドの清水は、試合前の時点で23試合に登板して防御率0.41。1死から柳町達外野手が左前打で出塁する。ベンチもすかさず代走を送った。今宮が打席に入ると、1ボールからの2球目。スッとバットを寝かせると、一塁線に転がした。一塁にヘッドスライディングで飛び込むと、ファーストの中田の失策も呼んで二、三塁にチャンスを広げた。

 栗原陵矢内野手は空振り三振に倒れたが、最後は中日バッテリーの暴投で緒方が同点のホームを踏んだ。今宮のセーフティバントも、一塁へのヘッドスライディングも、なかなか見ないプレー。本人は、どんな狙いで実行に移したのか。

「いや、ふと思いついて。すごく迷ったんですけどね。送りバントになってもツーアウト二塁というところでもありましたし。カウントが1ボールだったので、ファウルでもいいやと思ってやったら結構いいところに転がっただけです。それだけです」

 たとえアウトになったとしても、ランナーは得点圏に進む。通算380犠打、チームのために自分を犠牲にしてきた経験が、確実に生きたプレーだった。執念にも見えたスライディングは「ヘッスラの方が楽なので。駆け抜けるよりヘッスラした方がいいかなと思っただけです」と振り返る。それでも、今宮の“チームのために”という思いが、溢れ出たプレーだったのは間違いないだろう。

 同点で迎えた9回、マウンドのマルティネスは、試合前時点で26試合に登板して17セーブ、防御率0.72という竜の守護神。1死から緒方が7球粘って四球を奪う。大事な走者を出すと、今宮の2球目に二盗に成功した。小久保監督も「彼のそういうね、周りを見る目とか。緒方の盗塁のサポートだとか、いい活躍でしたね」と言うシーン。マルティネスのクイックタイムや、盗塁を警戒すれば直球も増える場面だろう。あらゆる状況や条件を踏まえて、今宮は「読んだ」と表現する。

「色々と機転を効かさないといけない場面だったので。あそこを僕が読めたので良かったと思います。読めなかったらああいうふうにはなっていないので、良かったです」

 5月31日の広島戦(みずほPayPayドーム)で柳田悠岐外野手が右ハムストリングを痛めて長期離脱。今宮も「存在はデカいっすね。いろんな力を持っている人なので」と、柳田がいなくなる意味をヒシヒシと感じていた。繋ぐという意識が結果に繋がったこの日、後ろを打ったのは栗原だった。「一緒ですよ。ああいう形でなんとか回すことができて、クリで勝負というのも、ギーさん(が3番だった時)とやっていることは変わらないので」と足元を見つめる。どこまでもチームの勝利を優先する男だから、結果に繋がったことが全てだった。

「いかにいい形で次に回せるかというのを考えて、結果、ああいう感じで体は動きましたけど。相手のミスとはいえね、1点入ったので、それが良かったです」

 柳田が離脱して迎えた6月、3試合ではあるが月間打率.385と息を吹き返してきた。「なかなか打てていないので。与えられたことをね、役割っていうのは人それぞれ違うので。その役割を果たすのみです。結果ああなって良かったです」。大黒柱がいない中でも、今宮健太の存在が頼もしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)