敗戦の“有効活用”だった。ソフトバンクは14日、敵地・楽天生命パークで楽天に1-4で敗れた。先発の有原航平投手が2回、4回に2点ずつを失って4失点。打線もポンセら楽天投手陣の前に、三森大貴内野手の適時打で奪った1点のみ。散発の5安打に終わり、今季35試合目で10敗目を喫した。
「今日とかも負けるにしても4-2、4-3くらいの展開にできた試合だったな、と」。小久保裕紀監督がこう振り返った一戦。ポンセの前に苦戦する中で、首脳陣が見せたのは、中継ぎ投手陣の起用における工夫だった。
3点ビハインドの7回からは先発の有原に代えて長谷川威展投手を投入。左腕の長谷川が小深田を二ゴロに打ち取り、小郷に左前安打を浴びたところで、すぐさま又吉克樹投手にスイッチした。競った展開ではなく、長谷川に1イニングを任せてもいい場面だったが、あえて右打者の村林を迎えたところで右腕に代えた。
その又吉が小郷の盗塁失敗と村林の空振り三振で、8回を無失点に抑えると、9回には普段、勝ちゲームで投げる津森宥紀投手も投入。現在、リーグトップの4勝をマークしている津森は危なげなく3者凡退に封じて、9回の味方の反撃を待った。
ここまで35試合を消化して、23勝10敗2分けの貯金13のホークス。この日の中継ぎ陣の起用は、好調なチーム状況がゆえの事情でもあった。
チームは5連勝中で、黒星を喫したのは5月4日の西武戦(ベルーナドーム)以来、10日ぶりだった。この間、勝利の方程式の藤井皓哉投手、松本裕樹投手、ロベルト・オスナ投手の登板こそ3試合ずつあれ、津森は同5日の西武戦(同)、又吉と長谷川は同6日の日本ハム戦(みずほPayPay)から登板はなく、間隔が空いていた。
「津森(宥紀投手)は出さなくていいと言っていたけど、ちょっと中(登板間隔)が空いていたんでね。優先順位的に倉野コーチが使っておきたいっていうことで行った。長谷川(威展投手)も1イニング任せてもいいんですけど、又吉(克樹投手)も登板が空いていたんで。今日はそういう意味では、彼らを優先的に投げさせようということで。ビハインドなのでそうやりました」
小久保監督は試合後、こう語っていた。雨天中止もあって試合数が少なく、かつチームが連勝中ということで、一部のリリーフ陣の登板間隔が空き過ぎていたため、調整登板の意味合いも込めて、7回からの2イニングで3人の投手を注ぎ込んだ。
また、ドラフト2位ルーキーの岩井俊介投手の姿はこの日、ファーム施設の「HAWKS ベースボールパーク筑後」にあった。1軍の出場選手に登録されていながら、15日以降に香川・丸亀市で行われる3軍戦に登板し、実戦登板の機会を作るためだ。岩井に至っては1軍に再昇格した4月30日の楽天戦(みずほPayPay)以降、登板がなく、間隔は2週間も空いていた。
「すごく空いてしまっていて、今度出た時に久しぶりの登板になってしまう。なるべくそれが今はできる、1人多く入っているので、ファームをうまく使って投げてもらって帰ってくることにしています」と、倉野信次投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は明かす。
ゴールデンウィークの連戦が終わり、3週連続で木曜日に試合がない。週5試合が交流戦まで続き、日程的に余裕がある。登録しておく先発の枚数を1枚減らすことができるため、中継ぎを1人多く登録できているが、ベンチ入りの人数には限りがあるため、どうしても1人はベンチから外さねばならない。であれば、その“ベンチ外”の枠を活用し、ファームで登板機会を作り出そうとしたのだ。
「悩ましいですけど、苦しいわけじゃないですから。ピッチャーがいないとか、登板過多で投げさせられないとかいう状況じゃない。こっちの悩みなら僕らが工夫すればいいだけなんで、苦しい悩みではないです」という倉野コーチ。投げ過ぎも問題だが、投げなさ過ぎても良くはない。リリーフ陣の起用は、常に首脳陣が考えを巡らせている。