憧れの存在からもらった言葉はうれしいものだ。ソフトバンクの新人選手が4月30日、楽天戦(みずほPayPayドーム福岡)を試合前練習から見学した。「ここでプレーするというのが夢でもありますし、ここでプレーする自分を浮かべながら、先輩方の練習を見させていただきました」と決意を新たにしていたのが、ドラフト7位で入団した藤田悠太郎捕手だ。甲斐拓也捕手からかけられた言葉で、自分が1人のプロ野球選手であることを実感した。
藤田悠は福岡大大濠高からドラフト7位指名を受けてホークスに入団した。右投げ右打ちの捕手で、高校通算43本塁打を記録。小学6年生の時には「福岡ソフトバンクホークスジュニア」にも選出されるなど、ホークスと強い繋がりを持って野球人生を過ごしてきた。入団会見など、節目のタイミングで何度も憧れの存在として名前を挙げてきたのが、甲斐だった。
見学という形で訪れたみずほPayPayドーム。支配下で指名を受けた選手の中では、唯一の捕手。すぐに足を運んだのが、捕手としての練習をしている先輩のもとだった。「甲斐さんにも海野さんにもご挨拶をさせていただきました。『頑張ってるか』と言われました」。甲斐がくれた言葉が、自分の背筋を伸ばした。
「『見学させていただきます』と言ったら甲斐さんは『ここでお前がプレーすること、それを大事にしなさい』と言われたので、うれしかったですし。モチベーションにも変えていけたら」
高校を卒業してまだ2か月。今はまだ実感を持てないかもしれないが、みずほPayPayドームは憧れる場所ではない。チームを勝たせることで、プロ野球選手としての地位を手に入れる場所だとわかってほしかった。甲斐自身も、育成6位からの入団で今ここにいる。「『ここでやらないといけないんだぞ』って言われましたし、強い気持ちを感じたので、自分もやっていかないといけない」と、藤田悠にとっても貴重な経験、言葉になった。
「お手本になる選手や、超えていかないといけない選手はいっぱいいるので、いろんなことで刺激を受けながら頑張っていきたいと思います」
福岡県の糸島市出身。ドームには何度も訪れたことがあるが、自チームの本拠地球場として来れば見え方もまた違う。「ここでやる別の楽しさというか、本当の野球の楽しさというか。レベルの高いところでやる野球の楽しさっていうのを感じられると思う。良い緊張感で野球をやってみたいです」。1軍にしかない緊張感も、重圧も、いつかは自分が背負わなければならない。幼い頃から思い入れのある球場なら、なおさらグラウンドに立ってみたくなる。
「広い球場だと感じますし、地元が福岡で見慣れた風景でもあったので、グラウンドに入ってみて、自分が予想していたよりもセンターが広いなって思ったりとか。気づきもありましたし、見ていて本当に楽しい練習見学でした」
2022年から2年間、米国で指導者としての経験を積んだ倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「去年、僕はアリゾナにいたんですけど、アリゾナでダイヤモンドバックスとレンジャーズが試合をする時はバス2台で全員で行っていました。そういうのもアメリカでもありましたね」。先輩たちのプレーを見ることが大切なのは、日本だけではない。「どんどんこういう機会はやったらいいと思います」と、距離感を縮めることは必ず後輩たちの糧になる。
藤田悠にとっても、貴重な時間になった。「打球の質とか、キャッチボールの球だとか、1軍の選手であるべき姿というか、納得させられました。自分はここでやっていかないといけないんだという気持ちになりました」。今はファームの非公式戦で、少しずつ出場機会を積んでいる段階。いつか必ず、幼少時から憧れた場所でマスクを被る。