送りバントで“発覚”…甲斐拓也の「野球偏差値の高さ」 奈良原ヘッド絶賛の洞察力

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:竹村岳】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:竹村岳】

奈良原ヘッドの考えと一致した甲斐拓也の“判断と選択”

 甲斐拓也捕手が“野球偏差値”の高さを見せつける場面があった。6日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。9-4で快勝した試合で、甲斐が送りバントを決めたシーンだ。

 栗原陵矢内野手が二塁打で出塁した直後、無死二塁で回ってきた甲斐の打席。2点ビハインドの展開でベンチのサインは送りバントだった。セオリーでいくと三塁手に打球を取らせるバントが要求される場面。2ボールから甲斐はセオリー通りに三塁側へ打球を転がした。

 しかし、打球は三塁線に切れるファウルとなった。すると甲斐は次の球を一塁を守るマルティネスの前に転がした。マルティネスは捕球後、一塁に送球。送りバントは成功となった。なぜ三塁側から一塁側へ狙いを切り替えたのか? そこには、甲斐ならではの洞察力と判断力の高さが隠されていた。奈良原浩ヘッドコーチはこう語る。

「指示はないです。多分、自分で考えたんじゃないですか? 甲斐ぐらいの経験値がある人間であれば、(一塁手が)外国人というところもあるし、(三塁に送球すれば)タッチプレーなので。チャージがものすごければ別ですけど、1球目がそうでもなかったっていうところで、多分そっちをチョイスしたのかなって」

 1球目がファウルになっても、バントの方向を変える指示はなかったという。甲斐自身も「ランナーは二塁だったし、最初はしっかりサード側に強く転がそうかなと思って。それがファウルになっちゃったんで、次は打球をしっかり殺して、ファースト前でも大丈夫だなとは思ったので切り替えました」と振り返る。まさに奈良原コーチの読み通りの判断だった。

「1球目は(ファーストが)出てくるかどうかわかんないんで、一番安全な三塁側にやりに行く。で、その状況を見て、結果的には成功させる方向の確率の高い方をチョイスしたっていうところですね」。続けて奈良原コーチがこのように解説をしてくれた。

 結果だけを見れば犠打成功。だが、この送りバントには、一流プレーヤーならでは技術が隠されていた。広い視野と咄嗟の判断力、これらが集約されたワンプレー。「経験値の高さと野球偏差値の高さってところかなと思いますけどね」。奈良原コーチはそのシーンを振り返り、甲斐の判断に目を細めていた。

(飯田航平 / Kohei Iida)