待ち侘びる対戦「やっぱりヒットを打ちたい」
ソフトバンクの野村勇内野手が1軍の舞台に帰ってきた。2月の春季キャンプはA組スタートしたものの、「左座骨疲労骨折」でキャンプ途中に離脱。その後は、リハビリ組での調整を余儀なくされていたが、4月16日の日本ハム戦(エスコンフィールド)でようやく今季初昇格を果たした。
家族の支えもあり、順調な回復ぶりを見せた。ファームでも軽快な動きを披露。1軍での今季初打席は昇格当日に巡ってきた。9回2死一、三塁のチャンスで周東佑京外野手の代打として打席に入った。惜しくも三振に倒れたが、途中出場した翌17日の同戦では、延長10回に今季初安打を右前に運んだ。
状態が上がるにつれて明るい表情も増えた野村勇だが、春季キャンプ序盤は表情が浮かなかった。怪我で離脱する前も「実戦に入ってきて、良くはないですね」と、言葉少なだった。表情が晴れなかったのは、打撃の状態が上がっていないのも理由の1つだったが、ホークスを離れた同級生の存在も影響していた。
「ピッチャーと野手なんで実感はないんですけど。アップの時のムードは変わってきてるんじゃないですかね。(甲斐野)央がいた時の方が明るいんじゃないですかね」
甲斐野央投手が西武に移籍したことによる昨季までとの変化をこう語っていた。野村勇と甲斐野は同級生でもあり、親交も深かった。野村勇が入団した当初、甲斐野のことを“怖い”と感じていたというが、お互いのキャラも相まってすぐに打ち解けた。それだけに、甲斐野のことを話す時には表情にも寂しさが滲んでいた。
甲斐野がホークスを離れる際には「勇も絶対にホークスの顔になるべき選手と思うので、活躍しているところを見たいです」とのメッセージが送られた。これを伝え聞いた野村勇は「適当に言ってるでしょ」と冗談っぽく笑った上で、「はい、頑張ります」と照れくさそうに返した。同級生からの言葉は力に変わったはずだ。
今季は“敵同士”として対戦することになる。「やっぱりヒットを打ちたいなって思います。でもちょっと怖いですね、球速いんで。デッドボールの怖さです。(死球だったら)乱闘でしょ、行きますよ(笑)」。本音とジョークを交えて語ったが、表情は自然と緩んだ。
甲斐野はすでにベルーナドームで行われた12日の対戦でマウンドに上がり、ホークス打線と対峙した。ただ、その時、野村勇はまだ2軍。2人が顔を合わせるとすれば、27日からPayPayドームで行われる3連戦になる。もちろん試合の結果は重要だが、互いに高め合ってきたからこそ分かり合える、2人だけが感じることができる時間も楽しんでほしい。
(飯田航平 / Kohei Iida)