夕食時にかけられた「待っているからな」 失意の栗原陵矢を救った守護神オスナの言葉

ソフトバンク・栗原陵矢(左)とロベルト・オスナ【写真:小池義弘】
ソフトバンク・栗原陵矢(左)とロベルト・オスナ【写真:小池義弘】

13安打11得点で大勝した13日の試合後に食事会場で…

 久々の快音だった。14日にベルーナドームで行われた西武戦。「7番・三塁」でスタメン出場した栗原陵矢内野手がトンネルを抜けた。6回の第3打席で21打席ぶりとなる安打。続く第4打席でもヒットを放ち「苦しかったですね。ホッとはしていないですね。これを続けていかないと意味ないですし、今日1日だけのものにしちゃいけないので、まだまだと思っています」と振り返った。

 6回2死走者なしで迎えた打席だった。西武先発・高橋光の真っ直ぐを左中間に弾き返した。「なんか久しぶりの感覚でした。とにかく塁に出たい、ヒットを打ちたいのもそうですけど、塁に出ることを考えていました」。外野の人工芝で弾む打球。21打席ぶりに「H」のランプを灯した。

 8回1死走者なしで巡ってきた第4打席は前の打席以上に必死だった。「2本目が大事だなって自分の中で思っていたので、必死にいきました。しっかりと芯にボールが当たったっていうのが一番良かったと思います」。本田が投じた真っ直ぐを綺麗に弾き返すと、再び中前へ。マルチ安打は今季初めてだった。

 開幕から三塁手としてスタメン出場が続いてきた。ただ、開幕からなかなか打撃の状態は上がらず、4月7日の楽天戦(楽天モバイル)の2打席目に中前安打を放ってから、完全に当たりが止まった。4試合連続でノーヒット。チームが13安打で11得点を奪った13日の試合も1人、蚊帳の外にいた。山川穂高内野手の2打席連続満塁弾でお祭り騒ぎになる中、うつむきながら帰りのバスに乗り込んだ。

 その夜、埼玉県内の宿舎に戻り、夕食を摂っていると、守護神のロベルト・オスナ投手が歩み寄り、話しかけてきた。

「みんなお前の味方だからな。みんなお前を待っているよ」

「投手に助けられる日もあれば、野手に助けられる日もある。だから、オレはまたお前が助けてくれる日を待っているからな」

 試行錯誤をどれだけ繰り返しても、トンネルの出口は見えてこなかった。失意の底に落ち、持ち味の明るさは失われつつあった。そんな状況を見て、守護神は声をかけてくれた。「それはすごい嬉しかったですね。いろんな先輩にも気を遣っていただいて嬉しかったです」。先輩たちも声をかけてくれた。この日も試合前練習を終えると、すれ違いざまにオスナが栗原を励ますシーンもあった。

 この2安打に小久保裕紀監督も安堵した。「練習はそんな悪くないなと思いながら、今日も練習は全然悪くなかったんですよ。今日は内容も結果も結構求めているところはあったんですけど、非常にいい形なんで、ちょっと上がる兆しが見えました」。各球団の対戦が一巡するタイミング。指揮官の頭の中では入れ替えの選択肢もあったという。結果を残したことで、崖っぷちで踏みとどまった。

「いろんなことをやりましたし、いろんなことを考えました。なかなかうまくいかなかったことが多かったですけど、これからもそれは続くと思います。圧倒的に技術が足りないな、というのが自分の中にはあるので、そこをもっともっと上げていかないといけないと思います」。これを復調のキッカケに……。ようやく闇に光が差し込んできた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)