再確認した目標「湧き上がってくるものの方向性が1つに」
首脳陣の言葉が目指すべきものを再認識させてくれた。石川柊太投手は3月29日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの阪神戦に2番手で登板して5回2安打無失点の好投を見せた。4回からマウンドに上がり、毎回の6奪三振。「真っ直ぐの感じが良かったですね。カーブも悪くなくて、カットも良くて」と納得の表情を見せていた。
この日の試合で先発したのは大津亮介投手だった。開幕直前まで先発ローテーションの枠を争ってきたライバル。和田毅投手の負傷の影響で、4月4日のロッテ戦(PayPayドーム)に先発予定だった大関友久投手が、ホーム開幕戦となる2日のロッテ戦の先発を任されることになり、4日の先発には大津が選ばれた。
惜しくも開幕ローテ入りを逃した石川だが、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)のある言葉で、自身が目指す目標への考え方が明確になったという。「ここ数年ではなかった」と、昨年まで感じていたチーム内の雰囲気までも変える言葉になったと石川は感じている。
「倉野さんが『競争はここまで』という話をされたんです。自分の中ではどこでもチームの力になればいいなって思うし、誰かが打たれていたら励ませばいいし、抑えたら喜び合えばいい。競争だったら『誰かが打たれた』とか、そういうのがここ数年はチームの中ではあったので」
プロの世界は誰かを蹴落とさなければ自分のポジションを確立することはできない。時にはある選手のピンチが別の選手にとってのチャンスになることもある。しかし、その気持ちだけでは、チームとして掲げる日本一という大きな目標には辿り着けない。シーズンが始まれば、全員が同じ方向を向いていなければならない、と石川も感じていた。
「自分は日本一に向かって味方同士で戦い合うっていうよりは、自分を高めていって、どういうピースになっていくかっていうつもりで野球をやっているので」。開幕ローテに入れなくても出番は必ず来るはず。その時に自分がチームに貢献するためには何をすればいいのか? そのことだけを考えながら野球に向き合っている。
開幕ローテ入りを目標にしていただけに、悔しい気持ちがないわけではない。それでも「自分が開幕ローテに入ってないから『なんだよ』とか1ミリも思わないし、そういうことじゃない戦いをしていきたいなっていうところです」と前を向く。倉野コーチの言葉が自身の考え方と同調し、気持ちもラクになった。
今は日本一という明確な目標に向かって全力でエネルギーを注ぎ込むことができている。それは投球にも良い影響を与えている。「去年はチーム一丸になっていなかったとかそういうつもりではないけど、今年はそういう“意思”を感じるので、そこはすごく違うなっていうところです」と、チームメートのまとまりも感じることができている。
「ちょっとした感情のエネルギーだったり、湧き上がってくるものの方向性が1つになってくると全然違うんで。そう言われたっていうのもあるし、その中で頑張ろうって思うところもあるんで、ここからはその戦いじゃないかなって。チームが本当に1つにならないといけないと思うし、1つのピースになれるように調整するって感じですね」。こう語る石川はスッキリした表情でしっかりと前を見つめていた。
(飯田航平 / Kohei Iida)