18日に行われた紅白戦では2回1失点…最速は143キロで「難しいんですよね」
試行錯誤の日々を過ごしている。ともにヒントを探して、きっかけを掴もうとしている。ソフトバンクの板東湧梧投手が27日、B組の宮崎サンシャインズとの練習試合に先発した。今キャンプでは初の対外試合での先発で2回無失点。首脳陣からの“優しさ”もにじんだ登板で、ゼロを並べた。そんな板東は今、2月を振り返って「試行錯誤の1か月でした」と表現する。思い悩む中で、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)から指摘されていることがある。
18日に行われた紅白戦、板東は白組の3番手として登板。先頭の仲田慶介外野手に2ボールとすると、3球目の直球を右越え二塁打とされた。続く川村友斗外野手にも四球を与えるなど、立ち上がりから制球にも苦しんでいた。その後1死一、三塁で井上朋也内野手の内野ゴロの間に失点。4回は3者凡退としたが、最速は143キロだった。この日の宮崎サンシャインズ戦でも144キロにとどまり、出力を出せずにいる。
リリーフ時には150キロを超える直球を投げていた板東だが、2月という時期ではあるものの140キロ台前半にとどまった。試行錯誤している点について「体はいい(元気)ですし、力もあるんですけどそれが噛み合っていなくて、投球に出力が出ない。フォームのところです」という。首脳陣からの言葉もヒントにしながら自分なりに考えている結果、どこに要因を見出そうとしているのか。
一般論では、スピードが出るようになっても制球がまとまらない。球速とコントロールは“反比例”のような関係のイメージがある。板東の場合は「両方です。僕はどっちも比例するタイプですから」。出力が上がってこないことが、最大の武器でもあるコントロールにも影響を与えていると自己分析する。思い悩む点についても「難しいんですよね、これが……。気持ち悪いっていうか、いろんなことを試しています」と、今もきっかけを探している途中だ。
全体練習が終わった後の個別の時間。ブルペンで中田賢一投手コーチ(ブルペン補佐)に見守られながら、シャドーピッチングやネットスローに励む姿をよく見かける。「こないだ武田さんに教えてもらっていい感じのものが出ていました」とチームメートからもきっかけを得ようとしている。「一喜一憂しないようにはしています。バチッと合ったら(いい感覚が)出てくれるとは思うんですけど」と、一進一退する状態と毎日のように向き合っている。
倉野コーチは「メンタル」を指摘したという。「試行錯誤しているのはもちろんわかっている」とした上で、コーチとして行っている板東へのアプローチを明かした。
「僕は『必要以上に考えすぎないように』というのは常々、言っています。どうしても、上手く開き直れない部分が正直あるので、そこが吹っ切れるようになったらもっと状態って上がりやすいのにな、っていうのはある。彼はメンタルがかなりパフォーマンスに影響があると思っている。そこを引き出して上げたいんですよね。どうしても考えすぎてしまう癖というか、そこがあるので、なんとか開き直らせる言葉掛けはしているつもりです」
板東はシーズン中から、日本語で「瞑想」を意味するメディテーションというセッションを受け続けてきた。とにかく前向きな言葉をかけられることで、ポジティブなマインドとなる取り組みだ。セッションは定期的ではあるが、1人で部屋にいる時も寝る前に座禅を組んで呼吸を整える。板東自身も、メンタル面がパフォーマンスに及ぼす影響が大きいことをしっかりと自覚して、取り組みを継続してきた。倉野コーチもメンタルに課題があることを共通の認識として抱いていた。
米国で2年間、指導者としての経験を積んだ倉野コーチ。指導論は人それぞれだが「投手のメンタルは本当に大事。もちろん技術もあるんですけど、僕のコーチとしてのアプローチは、実はメンタルが半分以上なんです。6割、7割はメンタルなんじゃないですか」という。「ポジティブになることが全てではない。ネガティブ思考の人がポジティブになることは僕は不可能だと思っている。それは性格ですから。だから無理してポジティブになる必要はなくて、今やるべきことに集中できるかだと思います」。自分の現状も性格も受け入れて、真っ直ぐ向き合う。その先にきっと、マウンドでの結果があるはずだ。
2月も終盤を迎えた。競争の中にいる立場ではあるが、投手としてレベルアップするにはどうすればいいのか。前に進むために焦らせず、親身になってくれる倉野コーチの存在を板東は「冷静に見てくれるので、しっかりアプローチしてもらっています。B組で投げるのも、そういう意味でもあると思いますし」と語る。あえてB組登板という“親心”はしっかりと伝わっていた。競争が本格化する3月に向けて、足元を見つめる日々を過ごす。
(竹村岳 / Gaku Takemura)