好結果残すも見えた課題「ナニクソ魂でいきます」
溢れ出る闘志がもたらした結果だった。ソフトバンクは13日、宮崎・生目の杜運動公園で行っている春季キャンプの第3クール最終日を迎えた。キャンプ2度目のシート打撃でアピールに成功したのは、今季から育成契約になった古川侑利投手。小久保裕紀監督が「目立っていた」と目を細める投球だった。
初のシート打撃が行われた12日の練習後、小久保監督は報道陣に対して、こうこぼしていた。「あまり下から良い報告が上がってこないんで、寂しいところですよね」。B組の首脳陣から、A組昇格候補となる選手の推薦が上がってきていないことに苦言を呈していた。その言葉を自分のことと受け止め、誰よりも早く結果で示したのが、この日の古川だった。
育成からの“下剋上”をテーマに掲げる右腕は打者6人に対して27球を投げ、四球を1つ与えたものの、無安打に抑えた。この日のシート打撃に登板した6人の投手で安打を許さなかったのは古川だけ。1人目の打者となった周東佑京内野手のバットをいきなり初球でへし折り、持ち味である力強い投球を披露した。
「アピールが物足りないという記事を見たんで、なにくそという感じ。オレを見てくれって感じです」
小久保監督が発したメッセージを受け止め、強い気持ちを持って上がったマウンド。指揮官も「今日は育成選手の中では1番抜けていたというか、目立っていたと思います。2軍の方からもその報告は来ていたので、実際に打者と対戦しないと、ブルペンではなかなかわからないですけど、実際にその通りでしたね」と目を細めていた。
手応えと課題を得る投球になった。「(打者が)絶対に真っ直ぐに張っているだろうなっていうところでも、真っ直ぐを投げてファウルが取れていたので、そこはすごく自分の中でポジティブな要素」。オフから真っ直ぐの強さに手応えを掴みつつも「対バッターになった時にそうじゃない可能性もあるんで……」と少なからず不安もあった。この日の投球でその手応えが確かなものになった。
一方で、変化球の精度には課題が残った。「抜けています。それが入ればめっちゃ楽なんですけど、カーブ、スライダーが変化量的にも結構エグいので……」。変化球が抜けることが多く、カウントを整えることができなかった。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)からもアドバイスを受け、変化球の精度を高めていくことで、今後の取り組み方は一致した。
小久保監督は「ベンチが必要だと思った時点で、上げるチャンスはある。全員にそれは言っているので、鼻息荒く来てください」と言う。現状での支配下登録は62人。上限の70人には8つの枠が残っている。育成選手たちにとっては大チャンス。古川のように“ガツガツ”とアピールしてくる選手を指揮官も待っている。
支配下に返り咲くためには、まだ足りない部分があることも本人が1番自覚している。「あんな内容じゃヤバいです」。A組の打者を抑えても、まだまだ納得できない。「今日できなかったことを見せられるように。ナニクソ魂でいきます」。確かな手応えと課題を持って古川は更なるアピールチャンスに備える。
(飯田航平 / Kohei Iida)