12球団中11位の課題 最初のミーティングで伝えたテーマ…倉野信次コーチが挑む四球減

ソフトバンク・倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:竹村岳】
ソフトバンク・倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)【写真:竹村岳】

ホークスの昨季「BB%」は12球団で11番目だった

 4年ぶりのリーグ優勝を目指すホークスにとって課題は投手陣の整備、強化であることは間違いない。リーグ最終戦で3位に沈んだ昨季、チーム得点数はリーグトップ、チーム打率もリーグ2位と攻撃面で好成績を残した反面、チーム防御率はリーグ4位と苦戦した。

 投手陣の強化を託されたのが、3年ぶりにホークスに復帰した倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)だ。2年間、メジャーリーグ・レンジャーズのマイナーでコーチを務めて本場の野球を学び、それをホークスへ還元していこうとしている。

 3年ぶりに戻ってきたホークスでの春季キャンプ。倉野コーチは投手陣を建て直すために、1つのテーマを課した。キャンプを前にした今年最初の投手陣全体でのミーティングで、声を大にして伝えたのは「ストライクゾーンで勝負すること」だったという。

 ホークス投手陣にとって積年の課題となっているのが四球数の多さだ。与四球割合「BB%」(与四球÷対戦打者)は昨季が8.4%で、12球団中11位(パ・リーグで5位)。2022年は8.5%で12球団ワースト、2011年も8.7%で12球団中11位(パ・リーグで5位)だった。リーグ3連覇を果たしているオリックスは2021年からリーグで3位、2位、1位と年々、良化している。

 斉藤和巳・現4軍監督が投手コーチに就任して迎えた2023年も四球減を目指して、意識づけを図った。だが、結果を見てみれば、6.4%だったオリックスとホークスとの差は実に2%。数にして71個の開きがあった。

 倉野コーチはこう分析している。

「いつも四球率って課題としてあがるじゃないですか。僕は四球を減らすという意識ではなくて、ゾーンで攻めるという意識で投げることが大事だと思うんですよ。その結果、四球って減るんです。考え方ですよね。今までは四球を意識しすぎたところもあると思う。四球を意識して腕の振りが弱くなって、置きにいって打たれたら意味ないんで」

 四球を減らそうとするのか、四球のことは頭から消し去り、ただストライクゾーンで勝負しようとするのかでも、大きな違いが生まれると倉野コーチは言う。そう考えるようになったのは、レンジャーズでコーチを務め、アメリカの野球、考え方に触れた経験が土台にある。

「アメリカは、そもそもボールゾーンにボールを投げると言う概念がないんです。ボール球を振らせることはありますけど、ボールゾーンに投げる概念はあまりない。絶対に空振りするというデータが出ていれば別ですけど、向こうは球数をどれだけ減らせるかっていうのが絶対なんで。なるほどな、と思うところがたくさんありました」

 基本的にメジャーリーグの先発投手は中4日でローテーションを回り、1度の登板で球数は100球前後が目安になる。100球前後でいかに長いイニングを投げられるかが重要なだけに、ボール球は使わず、どんどんストライクゾーンで勝負していく。その結果、無駄なボールは減り、四球減に繋がると倉野コーチは考えている。

「アメリカと日本ではバッターの傾向も違うので全部が全部、そのまま当てはまるわけではない。アメリカはこうだから日本もこれがいい、というのはないし、日本の野球にマッチするのはどういう考え方かをずっとオフに整理してきたので、それを還元しているというところです」

 必ずしもメジャーリーグでの考え方が正しいわけではない、と倉野コーチは言う。ただ、四球を減らそうと意識することは四球減には繋がらないという。とにかく投手は自信を持って、腕をしっかり振り、自分本来のボールをゾーンに投げ込むこと。“倉野イズム”で課題の四球を減らせるだろうか。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)