「頭ごなしじゃない」武田本人と決めた中継ぎ起用…倉野コーチが語る“中ロング”の価値

ソフトバンク・倉野信次1軍投手コーチ【写真:竹村岳】
ソフトバンク・倉野信次1軍投手コーチ【写真:竹村岳】

2023年は29登板で46イニングを消化…武田翔太の具体的な起用法について

 ソフトバンクの倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が22日、ファーム施設「HAWKS ベースボールパーク筑後」を訪れ、新人合同自主トレを視察した。取材に応じ、明かしたのは武田翔太投手の起用法について。「今のところ、中継ぎとしてスタートします」と明言した。

 武田は2023年、29試合に登板して1勝2敗、防御率3.91。先発は2試合、中継ぎとして27試合という内訳だった。46イニングの中で中継ぎだったのは39回2/3。小久保裕紀監督が就任し、倉野コーチが投手陣を引っ張っていく新体制となる。武田自身も、昨年12月の契約更改で「僕の希望としてはあまりないです」と、柔軟な姿勢を口にしていた。

 2023年、倉野コーチは米国にいたが、武田のキャリアはルーキーイヤーから見守っている。どんな部分に、中継ぎとしての適性を見出したのか。

「もう本人には伝えていますけど、去年のパフォーマンスを見て、本人と話し合いながらです(決めました)。こっちが頭ごなしに『お前は中継ぎしかダメだよ』と言っているわけでもないので。(中継ぎとしての適性は)メンタルと、実際のスキルです。その両面で考えた時に、中継ぎの方が彼の最大のパフォーマンスが発揮できやすいんじゃないかと思います」

 すでに本人とも意見交換し、了解を得ている。武田の反応についても「目は輝いていましたよ」と代弁した。2016年の14勝を最後に、2桁勝利から遠ざかっている右腕。“中ロング”をこなせる存在を「もちろん大きいです」と評価し、「長いイニングを投げられる投手は、いればいるほどいい」。現在は福岡市内で自主トレを行い、新たにフォークに改良を加えようとしている武田。2024年はブルペンの一角を目指して、キャンプインすることになった。

 先発登板だと2巡目、3巡目のことまで頭に入れてマウンドに上がる。それがカード頭なら、2戦目や3戦目にも生きてくるような投球内容、配球が理想だと武田も話していた。一方で中継ぎ時の心境は「本当に目の前のことだけ。“片道切符”じゃないですけど、今の状態で、とりあえず勝負するって感じ。気持ちが大事です」と言う。すでに動き出している試合に飛び込む中で、目的は常に目の前の打者を抑えること。先発に比べると余計なことを考える必要もなく、思考もシンプル。武田自身も新しい可能性をリリーフに見出していた。

 2020年から米大リーグでは「ワンポイント禁止」のルールが導入された。登板した投手は最低でも打者3人と対戦するか、そのイニングを完了するまでは交代できない。日本ではまだ導入されていないルール。ワンポイントで生きてきた選手をリスペクトしながら倉野コーチは「基本的にメジャーは3人以上投げないといけないですし、登録人数も少ない。複数イニングを投げられない中継ぎは、クローザー以外ほぼいないんです」と比較する。“一人一殺”の状況は当然何度も訪れるだろうが、ブルペンにもイニングを“食える”投手を置くことで、長いシーズンを乗り越えていきたい。

「この先変わる可能性もあるし、彼のポテンシャル的にも先発できないわけじゃない。ただ今は中継ぎでスタートした方が本人のためになるという判断を、選手本人としています」と、あくまでも現状の考えであることも強調する。甲斐野央投手の西武への移籍で、実績のあるリリーフを1人失うことにもなった。武田だからこなせるポジションで、貴重な1枚として力を発揮してもらう。

(竹村岳 / Gaku Takemura)