ソフトバンクの牧原大成内野手は来季、二塁手としてレギュラー争いに挑む。21日に行われた契約更改交渉では年俸1億円(金額は推定)の変動制となる3年契約を締結。来季に向けた自主トレの取り組みを問われると「来年はセカンド1本というところで、セカンドの動きであったりを一からやっていきたい」と息巻いた。
育成出身の牧原大といえば、球界でも屈指の“ユーティリティプレーヤー”として知られる。二塁手だけでなく遊撃手、三塁手、そして外野手としても高いレベルでプレーでき、その能力を評価されて、怪我で出場辞退となった鈴木誠也外野手に代わって野球日本代表「侍ジャパン」の一員としてWBCにも出場した。
ホークスで狙っていたのは中堅手のレギュラーだった。だが、チーム事情によってシーズン開幕は二塁手で迎えた。骨折により離脱する8月末までにスタメンで出場した90試合のうち38試合が二塁手、52試合が中堅手だった。「センター1本で始まるシーズンだったんですけど、開幕スタメンはセカンドというところはすごいビックリした。セカンドに切り替える中で、いい感じになってきたと思ったら、次はセンターに回ったり。難しさはあった」。“便利屋”としての苦悩が言葉には滲んだ。
小久保裕紀監督が指揮を執る来季は一転、二塁手としてプレーすることになる。「小久保さんとの面談のときに『セカンドとセンター、どちらで多く出たい?』という話になって『センターです』って答えたんです。でも、コーチ陣と話した時に、セカンドはチームでもトップクラスなんでセカンド1本で頑張ってほしいと言われた」。牧原大は中堅手の願望を持っていたが、新たな首脳陣から求められたのは二塁手だった。
中堅手を含む外野はホークスの中でも層の厚いポジションだ。レギュラーが確約されている柳田悠岐外野手、近藤健介外野手がおり、トレードでアダム・ウォーカー外野手も加入。中村晃外野手や周東佑京内野手、柳町達外野手、正木智也外野手、生海外野手といった面々もおり、争いは熾烈だ。
牧原大の二塁手としての守備力は、球界でも屈指のものがある。セイバーメトリクスの指標などで分析を行う株式会社DELTAのデータを参照すると、総合的な守備力を示す指標である「UZR」は二塁手で「2.4」。守ったイニング数は333と少ないが、これを1000イニングあたりに換算した「UZR1000」で見ると「7.3」となり、二塁を100イニング以上守った選手では両リーグで4位に位置する。これはゴールデン・グラブ賞に輝いた中野拓夢内野手(阪神)、中村奨吾内野手(ロッテ)を上回る。
一方で中堅手での「UZR」は「2.5」、「UZR1000」で見ると「5.6」となる。十分に高い数値ではあるものの、12球団全体で見ると10位に位置し、例えば周東の「17.4」よりは低くなっている。昨季は二塁手で「UZR1000」が「5.9」だったのに対し、中堅手では「-5.2」。指標だけでいえば、牧原大の守備力が生きるのは、中堅手よりも二塁手ということになる。
牧原大自身も「もともとセカンドは得意なポジションだった」という。首脳陣からの打診を受け入れた理由としても「小久保監督に言われたっていうのはありますけど、シンプルにゴールデングラブ賞を取りたい気持ちが1番」と挙げる。その視線の先には守備のスペシャリストに贈られる栄冠がある。
「小久保監督の言葉を信じて、キャンプから外野手用のグローブを持っていかないぐらいの気持ちでしっかりやりたいと思います」と意気込む牧原大。例年、複数ポジションを練習するがゆえに、1つのポジションに割ける時間は少なかったが、このオフは二塁手に全力を注いでいく計画。小久保体制の不動のセカンドとなるべく、研鑽に励む。