CSもあわせて23本塁打で345万円の寄付、活動6年目「年々、成長を感じる」
1人1人が、無限の可能性を秘めている。子どもたちの未来が少しでも輝くように、ギータなりの願いだった。ソフトバンクの柳田悠岐外野手が23日、福岡市西区にある家族と暮らせない子どものために活動するNPO法人「SOS子どもの村JAPAN」を訪問した。
2018年から始めた活動は6年目を迎えた。今季はシーズン22本、ポストシーズン1本で合計23本塁打。1本につき15万円の総額345万円を寄付した。「子どもたちのために自分も何かできたら」。自分自身も3児の父親であるからこそ、そう語る。1年に1回の大切な交流の場。子どもたちからたっぷりとエネルギーをもらって、モチベーションに変えているようだった。
国際連合世界食糧計画(WFP)に対しても、1本につき15万円の寄付を行なっている柳田。食料欠乏国、被災国への援助をする国際連合の機関で「困っている人がすごくいるので、こういう活動はずっと続けたい」と、活動の意義を自分なりにも話していた。自分のホームランで、救われる人たちがいる。柳田の寄付金はどのように使われて、子どもたちの人生に還元されているのか。
この日訪問した「SOS子どもの村JAPAN」の渡辺睦美広報を取材した。渡辺広報によると「子どもたちの習い事のお金、費用に使わせていただいたりとか、各家庭の中で旅行に行ったりだとか。そういうところで柳田選手からの寄付を使わせてもらっています」と明かす。水泳や勉強、野球を始めた少年も中にはいると言う。子どもたちに、やりたいことをしてもらいたい。寄付の使い道には、柳田の純粋な願いが込められていた。
「使われているのは主に習い事ですね。柳田選手の方からも、子どもたちの習い事に使ってほしいとのことですので、いつもご報告もさせていただいていますし、(子どもたちにとっても)やりたかったことがやれているのが大きいんじゃないかなと思います」
子どもたちにとっても、柳田の存在が大きなモチベーションとなっている。この日も質疑応答の時間でも「練習が大変な時にどうしていますか?」と施設のスタッフから質問が飛んだ。どんな子どもでも、気分の浮き沈みはあるもの。質問の背景について渡辺広報は「『ギータが頑張っているから子どもたちもなんとかやれている、頑張れている』という話も聞いています」と言う。もう投げ出してしまいたい。そんな時でも立ち上がれるのは、柳田がグラウンドで全力で戦っているからだ。子どもたちの表情からも、大きな変化が見て取れる。
「子どもたちからも、毎年この時期になると『ギータはいつ来るの?』と聞かれます。毎年来ていただけることが本当に楽しみになっているみたいです。コロナで来られなかった時もあったんですけど、その時もビデオメッセージをくれました。去年も『本当に大きくなったね』と声をかけてくださったり、今年は今年でコミュニケーションが取れるようになっていて、子どもたちのことを本当によく覚えてくださっています。名前まで覚えてくださっていて、自分もビックリしました」
シーズン中も、子どもたちとPayPayドームに応援に駆けつける。生観戦ではない時も、日頃からテレビの前でホークスの試合を、柳田の活躍を見守っているそうだ。この日は披露しなかったが「ホークスの応援歌をみんな歌えるらしいです。去年も『歌ってみなよ』ってなったんですけど、みんなモジモジしてできなかったんです。いつもは歌いながら応援しています」と、日常の一部を明かす。子どもたちの期待も、未来も背負っているから、柳田は輝ける。
最後の挨拶。少年から「ギータが頑張っているから、僕たちも頑張れます」という言葉があった。プロ野球選手として嬉しく、背筋が伸びる純粋な思い。「もっと頑張って、子どもたちがすくすく成長してもらえるように頑張りたいです」と深くうなずく。子どもたちの特徴、名前まで覚え始め「全然違いますよ。来た時なんて、めちゃくちゃ小さかった子がお兄ちゃんになっている。年々、成長を感じますね」と、真っ直ぐに育ってくれていることが嬉しい。3年間遠ざかっている優勝。届けたいものは1つだけだ。
「優勝をもちろん望んでいると思いますし、僕がもっと打てば優勝に近づくと思うので。もっともっと打てるように、優勝するためにもっと打ちたいと思います。自分の子どももそうですけど、ここの子どもたちの力に僕が少しでもなれるように頑張ります」
単なる活動という領域ではない。子どもたちの存在が、柳田の人生の大きな一部だ。「もちろんです。頑張ります」と、引退するまで活動の継続を誓う。柳田悠岐の1つ1つのプレーに、いつまでも夢を見ていたい。
(竹村岳 / Gaku Takemura)